夕方のスーパーで刺身を買い、持ち帰り用の保冷剤コーナーへ向かった。
台には「冷蔵・冷凍品をお買い上げのお客さま用/お一人様二個まで」と掲示されている。ところが前にいた女性は、小袋の保冷剤を束のままクーラーバッグへ押し込んでいた。
「タダなんだからいいでしょ?」
台に残った保冷剤は、あとわずかだった。
「すみません。後ろの人も使うので、二個までみたいですよ」
私が声をかけると、女性は振り返った。
「うちは家族が多いの。暑いし、タダなんだからいいでしょ?」
そう言いながら、さらに一束をつかむ。言い合いになっても解決しないと思い、私は近くで品出しをしていた店員へ声をかけた。
「保冷剤がなくなりそうなので、確認していただけますか」
店員が掲示を示す
店員は台の状況を見てから、女性に近づいた。
「恐れ入ります。無料の保冷剤は、お一人様二個まででお願いしています」
女性はクーラーバッグを抱えたまま言い返した。
「家族分が必要なの。サービスなんだから、少しくらいいいでしょう」
店員は掲示を指し、落ち着いて説明した。
「ほかのお客さまにもお使いいただくため、無料分は皆さま二個までです。追加で必要でしたら、レジ横で大きい保冷剤とドライアイスを販売しています」
「こんな小さいの二個じゃ足りないわよ」
「お持ち帰りの時間や商品の量に合わせて、販売品をご案内します。こちらの無料分を全てお持ち帰りいただくことはできません」
店員は強い口調で責めることも、必要以上に周囲へ聞こえる声で注意することもなかった。それでも、店のルールと代わりの方法をはっきり示した。
余分を台へ戻した
周囲の視線に気づいたのか、女性はしばらく黙ったあと、バッグから保冷剤を取り出した。二個だけ手元に残し、余分を台へ戻す。
「じゃあ、足りない分は買います」
店員は「レジ横へご案内します」と応じた。女性は気まずそうに目をそらしたが、それ以上反論せず、店員と一緒に売り場へ向かった。
店員は戻ってくると、台へ保冷剤を補充した。
「お待たせして申し訳ありません。どうぞお使いください」
私は掲示どおり二個を取り、礼を言った。後ろに並んでいた客も順番に受け取ることができた。
店の人に任せてよかった
保冷剤は無料でも、店が購入客のために用意している備品だ。必要以上に持ち出せば、後の人が使えなくなる。
とはいえ、客同士で無理に取り返そうとすれば、トラブルが大きくなることもある。今回は、ルールを運用する立場の店員に任せたことで、余分な保冷剤が戻り、女性にも代わりの購入方法が案内された。
帰宅すると、刺身はよく冷えたままだった。大げさな制裁はなくても、決まりが守られ、必要な人に行き渡った。それで十分すっきりした。
さいごに
保冷剤を大量に持ち帰ろうとする客には、店員が利用上限を示し、必要な人へ行き渡る運用に戻しました。無料の備品でも、店が定めた目的と数量を守る必要があります。あなたなら、ほかの客の迷惑行為を見かけたとき、どのように店員へ伝えますか。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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