私は40代の看護師で、連休のたびに夫と義実家へ帰省しています。
仕事帰りに手土産を買い、玄関先で渡すところまでが、いつの間にか私の役目になっていました。最初は「気持ちですし」と思えていましたが、感謝より先に評価が返ってくることが増え、少しずつ疲れていきました。
玄関先の手土産が「当たり前」になっていた
帰省の前日は夜勤明けでした。眠気をこらえながら駅ナカで焼き菓子を選び、紙袋の持ち手が手に食い込むのを我慢して義実家へ向かいました。
玄関のチャイムを押すと、義母は「来たのね」とだけ言い、私の顔より先に紙袋へ視線を落としました。
以前は「わざわざありがとう」と言ってくれていたのに、最近は中身を確かめる動きが先でした。こちらの好意が、いつの間にか納品のように扱われている気がして、毎回小さく心が削れていました。
「もっと気の利いたものにしてよ」と言われた日
義母は紙袋を受け取ると、その場で軽くのぞき込みました。
箱の大きさや包み紙の柄を確かめるように指先で整えたあと、ため息混じりにこう言いました。
「もっと気の利いたものにしてよ」
私は言葉が出ませんでした。忙しい中で選んだことも、外さないよう考えたことも、全部が否定されたように感じました。
さらに義母は靴箱の上から小さなメモ帳を取り出し、私の手に押し付けるように渡してきました。
「次はこれね。できれば限定」と、銘柄や条件が箇条書きで並んでいました。ダメ出しだけでなく、指定まで当然のように出てきたことで、玄関の冷たいタイルの上に立つ自分が急にみじめに思えました。
夫にメモを見せて、作戦を変えました
その日の夜、私は夫にメモを見せました。
私は「喜ばせたい気持ちはあるけど、文句を言われるなら私だけで背負いたくない」と、できるだけ落ち着いて伝えました。
夫はメモを見て眉を上げ、「じゃあリクエスト通りにしよう。指定するなら、指定した人が払うのが筋だよね」と言いました。私も、正面から言い返すより、現実を見せたほうが早いかもしれないと思いました。
次の帰省前、私たちはいったん立て替える前提で、夫と一緒に百貨店へ行きました。
メモに「限定」とあったので、取り扱い店を確認しながら別の店舗にも足を伸ばし、電車で往復することになりました。手土産は誰が見ても高級と分かる限定品で、購入代金は28,600円でした。
移動の往復運賃と追加の移動分を合わせて交通費は1,400円になり、合計は3万円ちょうどでした。
レシートと交通費のメモをまとめ、夫が「購入代金・交通費明細」と書いた小さな請求書を作り、封筒に入れました。
請求書1枚で、空気が変わった
当日、義実家に着くと、ちょうど義父の兄夫婦も来ていて、玄関先が少し混み合っていました。そんな中で紙袋を渡すと、義母は包みの雰囲気に気付いたのか、口を開きかけて黙り、表情が一瞬固まりました。そして取り繕うように言いました。
「あら、やればできるじゃない」
その瞬間、夫がにこやかに一歩前へ出ました。
「だろ?母さんのリクエスト通り、めちゃくちゃ『気の利いた最高級品』を探したんだ。あ、これ今回の購入代金と、探すためにかかった交通費の請求書ね。合計3万円。母さん、指定してまで欲しかったんだから、当然払ってくれるよね?」
義母は封筒を受け取ったまま固まり、「え……」と小さく漏らしました。
親戚の目もある手前、いつものように言い返せない様子でした。結局その場では「あとでね」と濁しましたが、帰り際には小声で「次から普通のものでいいのよ…」と言いました。
私は勝ち負けが欲しかったわけではありません。
ただ、好意を当然扱いされ、文句だけ言われる状況を続けたくなかったのです。
それ以来、義母は手土産に口出しをしなくなり、次の帰省では駅で買える無難なお菓子で十分になりました。玄関先の査定の視線が引っ込み、私はようやく息がしやすくなりました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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