マンションの共有予約スペースは、私にとって仕事の延長線にあります。35歳の保育士として、持ち帰りの制作物や園だよりの下書きを、家族の生活音から少し離れて集中したい日があるからです。
その日は19:00〜20:00で予約していました。スマホの予約画面を確認し、入口の時計も19:00ちょうどを指していました。20:00に退室して自室に戻り、PCやイヤホンの準備を整えて20:15のオンライン打ち合わせに入る段取りでした。
入室した瞬間の違和感
ドアを開けると、中にはすでに女性が一人いました。ノートPCと飲み物が広がっていて、画面には会議アプリらしき表示が見えました。相手の声は小さめでしたが、まだ話している最中のようでした。
一瞬、私が部屋を間違えたのかと思い、入口の表示と自分の予約画面を見比べました。部屋番号も時間も合っていました。相手もこちらに気づいたのに、手を止める様子がありませんでした。
私は入口付近で距離を取りつつ、「すみません、19時から予約していまして」と声をかけました。相手はイヤホンを外し、申し訳なさそうな表情を作りました。
「あと少しだけ」で予定が崩れます
相手は画面を見ながら「もう終わるんですけどね」と言いました。私は片付けに数分かかるだろうと思い、ドアの近くで待つ体勢を取りました。
ところが相手は荷物をまとめる気配を見せず、会議の相手に向けて追加で話し始めました。入口の時計を見ると19:03でした。この10分がずれるだけで、20:00退出から20:15開始までの準備時間が削られてしまいます。自室に戻って機材を立ち上げることまで考えると、焦りがじわじわ増えていきました。
私が「あとどれくらいかかりそうですか」と聞くと、相手は視線を上げました。そして軽い笑い方で、こう言いました。
「あと少しだけだから待ってて」
柔らかい言い方のせいで、こちらが融通を利かせる前提にされているように感じました。しかし、私の予定は誰かの「少し」に合わせて伸びてくれませんでした。
感情より記録を選んだ理由
ここで強く言い返せば、出て行ってもらえるかもしれません。ただ、同じマンションで顔を合わせる相手に感情で押し切ったことを想像すると、我慢せざるを得ませんでした。
また相手は、謝る素振りは見せるのに退室に向けた動きがなく、こちらが待っているのを見ても会議を続けていました。そうした様子から、ルールより目の前の都合を優先してしまう方なのかもしれないと感じました。だからこそ、個人同士の言い合いではなく、「記録」で線引きしたほうが早いと思いました。
私はスマホで予約履歴を開き、予約時間と部屋番号が分かる画面を表示しました。入口の時計が19:05を指しているのも確認し、管理人さんに連絡しました。
「予約時間を過ぎても利用者の方が退室されなくて、次の作業に入れないんです。予約履歴の画面もあります」
予約履歴で交代が決まった瞬間
数分後、管理人さんが入口まで来てくださいました。私はその場で予約履歴の画面を見せ、時間帯が私の枠になっていることを一緒に確認しました。
管理人さんは相手に穏やかに、「次の方の予約が入っていますので、いったん交代をお願いします」と伝えました。相手は「すみません、延びちゃって」と小さく言い、慌てて片付け始めました。
出ていくとき、相手は私に視線を向けましたが、言い訳はありませんでした。予約履歴と時計がそろった時点で、「あと少し」を押し通す余地がなくなったのだと思います。
私は19:15には席に着くことができました。失った15分は痛いものの、モヤモヤを抱えたまま譲り続けるより、気持ちはずっと軽くなりました。共有スペースは気遣いで回っているようで、実は記録とルールで守られている場所でもあります。次も同じことが起きたら、私は淡々と予約画面を開くでしょう。感情ではなく証拠で片づくと、こんなにスッキリするのだと実感しました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。



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