マンションの駐輪場当番は、十二世帯の持ち回りだ。ところが、理事を務める女性から二か月続けて指名され、当番表を見るたびに気が重くなっていた。
「家にいることが多いでしょう」
最初に声をかけられたのは、月初めのエレベーターだった。
「来月の駐輪場当番、お願いしてもいい? 家にいることが多いでしょう」
私は建築士として在宅で図面を描き、週に二日は現場や打ち合わせに出ている。以前、「自宅で仕事をしています」と話したこともあったが、女性は「お家でできる仕事なのね」と聞き流していた。
角を立てたくなくて、その月は引き受けた。駐輪場の自転車を並べ直し、長期間置かれたままの自転車を管理会社へ報告する。想像以上に手間のかかる作業だった。
二か月連続で私の名前
翌月、女性はまた当番表を持ってきた。
「来月もお願いね。あなたが一番うまくやってくれるから」
表には私の名前が二か月続けて書かれ、ほかの世帯は飛ばされていた。
「今月は次の方ではないんですか」と尋ねると、女性は悪びれずに言った。
「専業主婦なんだから暇でしょう? みんな仕事や子どものことで忙しいのよ」
「前にもお話ししましたが、私も仕事をしています」
そう答えても、「家でやる仕事でしょう」と取り合ってもらえなかった。
私は自宅の仕事部屋で管理規約を読み直した。そこには、駐輪場当番は全戸による輪番制とすると明記されていた。念のため、これまでの当番表も写真に残した。
名刺と規約を持って理事長へ
私は理事長に事情を説明し、規約の該当ページと当番表の写真を添えて、次の理事会で確認してほしいと申し入れた。後日、議題として扱うため、私も理事会に呼ばれた。
女性は会議の前にも、「あなたがやれば早いのに」と言った。
私は名刺を差し出した。
「私は在宅で働く建築士です。名刺は、専業主婦ではないことをご理解いただくためにお渡しします。ただ、仕事の有無にかかわらず、当番は規約どおり公平に回すべきではないでしょうか」
続けて、規約のコピーと過去の当番表を机に置いた。
理事長が記録を確認すると、私だけが連続で割り当てられていることは一目瞭然だった。
「これは輪番制になっていません。来月分から規約どおりに戻しましょう」
ほかの理事も同意し、その場で新しい当番表を作り直すことになった。女性は小さな声で、「調整が面倒で、頼みやすい人にお願いしていました」と認めた。
当番表が元に戻った
翌月の掲示板には、全十二世帯の順番が書かれた当番表が貼られた。変更する場合は同意を取り、理事会の記録に残すという運用も決まった。
廊下で会った女性は、「勝手に決めてごめんなさい」と頭を下げた。
名刺が解決したのではない。決め手になったのは、規約と記録をそろえ、正式な場で確認を求めたことだった。
さいごに
在宅勤務を理由に当番を押しつけられた女性は、規約と記録をそろえて理事会に相談し、公平な輪番制へ戻しました。在宅時間の長さと自由時間は同じではありません。役割が偏ったときは、決まりを確認し、権限のある人や会議へ相談することが大切です。あなたなら、繰り返し役割を押しつけられたとき、どの記録を残しますか。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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