母の妹である叔母のことを、私はずっと「少し強引なだけの人」だと思っていた。それが崩れたのは、ある法事の席でのことだ。
「姪よりずっと釣り合う女性、紹介できるわよ♡」
叔母は母の三つ下の妹で、地元で和菓子店を切り盛りしている。親族の集まりでは常に仕切り役を買って出て、甥や姪の配偶者に対しては「うちの身内に入れてあげた」という態度をにじませるタイプだった。
私の夫と最初に会ったのは、結婚の報告を兼ねた食事会だ。その場で叔母は夫に向かって、
「あなたって、どこかもったいないわね。姪っ子よりずっと釣り合う女性を紹介できるわよ♡」
と耳打ちした。冗談めかしたトーンだったが、私には丸聞こえだった。夫は苦笑いでかわしてくれたけれど、胃の底がすっと冷えたのを覚えている。
「また隣に座る」が続くたびに、私だけが消えていく
それ以来、母の実家に集まるたびに叔母の行動がエスカレートしていった。
食事の席では必ず夫の隣に座り、私が話しかける前に割り込んでくる。「あなたのお仕事って大変よねえ」「こういう男性って、家で甘えられてるのかしら」。
私への話題は「ねえ、あなた料理できるの?」の一言だけ。
親族の誰も制止しなかった。それどころか、叔母が夫と笑い合う場面を「にぎやかでいいわね」と流していた。
私だけが、この席にいなくていいんじゃないかという気持ちを積もらせていった。
夫に相談すると「叔母さんのことは気にしなくていい、俺はちゃんと分かってる」と言ってくれた。それでも、個人的に連絡するような仲になっているとは思っていなかった。
法事の大画面が「すべて」を映した
転機は、祖母の三回忌だった。
法要のあと、親族が座敷に集まって食事をする。叔母はその場を仕切り、「スライドショーで祖母の写真を流しましょう」と言いながら、自分のスマホを部屋の大型テレビにつなぎはじめた。
ところが、写真を探してスマホを操作するうちに、誤ってLINEアプリを開いてしまったようだった。
LINEのトーク画面——夫の名前が表示されたトークルームが、数秒間、親族全員の目に晒された。
メッセージの内容は一瞬だったが、「また会えるかな」「あなたのこと、もっと知りたくて」という文字は十分に読み取れた。
叔母は「あっ」と声を上げて画面を切ろうとしたが、それより先に伯母(母の姉)が「……ちょっと待って」と低い声で言った。
座敷が、水を打ったように静まり返った。
誰も庇わなかった
私は何もしなかった。お茶を持ったまま、ただ座っていた。
伯母が「あれは何のLINE?」と叔母に確認した。叔母は「違うの、違って……」と繰り返したが、誰も助け舟を出さなかった。
夫は目を伏せ、私の隣で「……ごめん」とだけ言った。
その後、叔母は食事が終わる前に「体調が」と言って席を外した。
後日、母から連絡が来た。「叔母さんが親族中に謝って回ってる。あなたには直接謝りたいって言ってるけど、どうする?」
私は「今は会いたくない」とだけ返した。
叔母との関係、そして私たちの今
夫とはその後、正直な話し合いをした。LINEのやりとりは数回あったが、実際に会うことはなかったと言う。夫は自分から叔母をブロックし、しばらくは親族の集まりへの参加を控えると申し出た。
私はすぐには信じきれなかったけれど、夫がそうして動いてくれたことは、確かに受け取った。
叔母は今もお詫びの連絡を送ってくるが、私はまだ返していない。
「気遣い」の顔をして近づいてきた人が、自分で繋いだ画面に足をすくわれた。私は何もしていない。ただそこにいて、お茶を飲んでいただけだ。
さいごに
「気遣い」の仮面をつけたまま近くにいる人に、ずっと消耗させられていた——そんなもどかしさ、分かる気がします。叔母が自分で暴いてしまったとはいえ、夫への不信感や親族の中での孤立感は、そう簡単には消えないもの。
あなたなら、この先どう気持ちを整理しますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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