キッチンを新しくしたい。そんな小さな楽しみのはずだったのに、工事が始まってから、私は何度も「このまま進めて大丈夫なのだろうか」と立ち止まることになった。
きっかけは、シンク下で見つかった水漏れだった。
「だいたいこの金額です」で契約
何社かに相談し、その中から地域で長く営業しているリフォーム会社を選んだ。
担当者は、「この辺りでは長くやっていますから、何かあってもすぐ対応できますよ」と自信たっぷりだった。その言葉に安心した部分もあった。
見積書には、キッチン本体、既存設備の撤去、設置工事、給排水工事、諸経費などが記載されていた。
ただ、細かい部分について質問すると、「実際に開けてみないと分からないところもあるので、その場合は追加になります」と説明された。
追加が発生する可能性自体は理解していた。
夫は仕事で契約時に同席できなかったため、私は内容を確認したうえでサインした。
そのときは、多少の追加があったとしても数万円程度だろうと思っていた。
着工後、「追加です」が続いた
工事が始まると、次々に追加の話が出てきた。
「壁の下地が傷んでいるので補修が必要です」
「古い排水管なので、この機会に交換したほうがいいです」
最初のうちは、「開けてみないと分からないと言っていたし」と納得していた。
ところが、追加額は5万円、さらに9万円、その次は十数万円と増えていった。
合計すると、当初の見積もりを30万円以上超える。
私はそこで初めて、これまでの連絡をノートに書き出した。
いつ、何の工事が追加になったのか。いくらと言われたのか。工事をしなければどうなると説明されたのか。
並べてみると、疑問も出てきた。
たとえば排水管については、契約前の現地調査でも確認できたのではないか。壁の下地についても、本当にすべて解体後でなければ分からなかったのだろうか。
追加工事が必要なのかもしれない。
でも、「必要です」と言われるたびにそのまま受け入れていいのか、分からなくなっていた。
「今日サインしてください」
着工から一週間ほどたった頃、担当者が追加工事の承諾書を持ってきた。
これまで口頭で説明されていたものをまとめた金額で、当初の見積もりと比べるとかなり大きな増額になっていた。
私は書類を見ながら言った。
「夫とも確認したいので、今日は持ち帰っていいですか?」
すると担当者は、
「できれば今日サインしてください。ここで決まらないと工事を止めることになりますから」
と答えた。
さらに、
「こういう工事のことは分かりにくいでしょうから、ご主人にも私から説明しますよ」
と言われた。
その言い方にも引っかかった。
分からないから質問しているのではない。金額が大きく変わった理由を確認したいだけだ。
私はその場ではサインしなかった。
「今日は決めません。追加工事の内容と金額の内訳を、項目ごとに書面でください」
そう伝えた。
その夜、夫と資料を確認した
担当者が帰ったあと、私は夫とこれまでの見積書、追加工事の説明、メモを並べて確認した。
そのうえで、消費生活センターにも相談した。
そこで言われたのは、追加工事が発生すること自体は珍しくないものの、内容や金額に納得できないまま、その場で承諾する必要はないということだった。
「まず、なぜ必要なのか、当初の見積もりに含まれていなかった理由、金額の内訳を確認してください」
そう助言された。
契約解除についても、工事がどこまで進んでいるかによって精算方法が変わるため、契約書を確認しながら慎重に進めたほうがいいと言われた。
私は少し冷静になれた。
翌朝、会社へ電話をした。
「担当者ではなく、今回の工事の責任者の方と一度お話ししたいです。追加工事について確認できるまで、これ以上工事を進めないでください」
と伝えた。
確認すると、説明と合わない部分があった
数日後、会社の責任者と担当者を交えて話をすることになった。
私は、追加工事について一つずつ聞いた。
「これは、契約前の現地調査では確認できなかったんですか?」
「この金額は、材料費と工賃がそれぞれいくらですか?」
「交換しない場合、どんな問題がありますか?」
責任者は、事前の現地調査記録や写真も確認してくれた。
その中で、排水管が古いことについては、着工前の記録にも記載があったことが分かった。
責任者は、
「この状態であれば、少なくとも交換の可能性は見積もりの段階でご説明しておくべきでした」
と認めた。
また、追加工事として提示されていた項目の中には、当初の工事範囲に含まれると考えられるものもあった。
一方、解体後に初めて分かった下地の傷みについては、追加が必要だという説明にも納得できた。
すべてが不当だったわけではない。
だからこそ、最初からこの説明をしてほしかったと思った。
「このまま任せるのは不安です」
会社側からは、追加工事の内容を整理し直し、見積もりを再提出すると提案された。
担当者も変更すると言われた。
それでも私は迷った。
一度立ち止まるまで、こちらから聞かなければ内訳は出てこなかった。大きな増額を、その日のうちにサインするよう求められたことも引っかかっている。
夫とも相談し、
「申し訳ありませんが、残りの工事をこのままお願いするのは不安です」
と伝えた。
会社側とは、すでに完了している工事や使用済みの材料について確認し、残工事を行わない形で精算することになった。
当初の見積額を丸ごと支払うわけではなく、どこまで施工済みなのかを双方で確認したうえで金額を決めた。
少し時間はかかったが、書面を取り交わして工事を終了した。
次の業者では、最初に細かく確認した
その後、残っていた工事を別のリフォーム会社に依頼した。
今度は、見積書をもらった段階で細かく質問した。
どこまでが基本工事に含まれるのか。追加になる可能性があるのはどこか。追加が必要になった場合、どの段階で金額を提示してもらえるのか。
担当者にも、
「追加工事が必要になったら、作業をする前に金額を確認してから進めてください」
とお願いした。
完成までは予定よりずっと時間がかかった。
それでも、出来上がったキッチンを初めて使った日はうれしかった。
蛇口をひねりながら、あのときその場で承諾書にサインしなくてよかったと思った。
追加工事が必要になることはある。
専門家に任せなければ分からないことも多い。
でも、分からないからこそ、
「なぜ必要ですか」
「いくらかかりますか」
「今ここで決めなければいけませんか」
と聞いていい。
あの日、私がしたのは工事を拒否することではなく、一度止まって確認することだったのだと思う。
さいごに
リフォームでは、工事を始めてから予想外の傷みが見つかることもあります。
だからこそ、「追加です」と言われたときに、それが必要な工事なのか、なぜ最初の見積もりには入っていなかったのか、金額はいくらなのかを確認することが大切なのかもしれません。
特に「今日決めてください」と急かされたときほど、その場で決めず、一度資料を持ち帰る選択肢もあります。
もし工事の途中で大きな追加費用を提示されたら、あなたならその場でサインしますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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