夕方、残業帰りに買ったコンビニ弁当を温めていると、スマホが鳴った。画面に母の名前。通話を取ると、開口一番こう言われた。
「仕送り増やしなさいよ、親不孝者!」
耳からスマホを少し離した。僕は毎月7万円、母に指定された口座へ送っている。何か急な出費でもあったのか。それとも、別の話なのか。嫌な予感がした。
「増やせ、親不孝者」って何の話
「母さん、仕送りのこと?」
「そうよ。うちは苦しいの。あんた、社会人でしょ」
勢いに押されそうになりながら、言った。
「毎月7万、振り込んでるよ」
「は? そんなの聞いてない。送ってないでしょ」
僕の通帳には、入社してからの振込履歴が並んでいる。初任給のあと、母から「ここに入れて」とメッセージで送られてきた口座へ、ずっと同じ金額を送ってきた。
「倍にしろ、友達は10万」まで
「友達のところは息子が10万よ。うちは倍にして14万でも足りないくらい」
要求が一気に跳ね上がった。
「まず、今までの分を確認しよう。通帳と振込の画面を見せるよ」
そう言うと、母は不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「そんなのいらないって。とにかく増やしなさい」
頭の中に、もう一つ疑問が浮かぶ。父は、この話を知っているのか。
「じゃあ今度の休みに、父さんも一緒に話そう」
「なんで父さんが出てくるの。家計は私が見てるの」
この言い方に、違和感が増した。
「じゃあ父さんも一緒に」会って話そう
週末、実家の居間。こたつの上に通帳と、ネット振込の明細を印刷した紙、母からのメッセージのコピーを並べた。母は腕を組んで座り、父は新聞を畳んでこちらを見る。
「これ、僕が毎月送ってる分。4月からずっと7万円。口座は、母さんが送ってきた番号」
父が通帳を手に取り、日付を指で追った。
「……本当に、毎月だな」
母は横目で見ながら言った。
「家のことは私がやってるんだから、細かいのはいいの」
通帳の名義「母さんの個人口座?」
僕は通帳の名義欄を指さした。
「この口座、誰の名義でどういう口座なの?」
母は即答した。
「家計のよ」
父が身を乗り出し、印字を見た。
「おい、これ……お前の名前じゃないか」
母の視線が泳いだ。バッグを手元に引き寄せ、早口になる。
「一回だけ入れてもらって、私が預かってただけ。食費とか、いろいろ出るでしょ」
「一回どころじゃないよ。毎月、同じ日で同じ金額」
父は通帳を閉じ、テーブルに置いた。
「俺は知らなかった。母さん、どういうつもりだ」
母は口を開けたまま言葉が出てこない。僕は声を荒げず、次を提案した。
「毎月7万だよ」明細も机に出す
「これからは、家の支払いは僕が直接払う。電気、ガス、水道、ネット。払込票や請求の画面を父さんから送ってもらえれば、僕が処理する。上限は7万まで」
母が身を乗り出す。
「ちょっと。私を通さないってこと?」
「そう。家計の管理は父さんと話して決めて。追加で必要なら、父さんから相談してほしい」
父はうなずいた。
「わかった。契約名義の整理も俺がやる。お前はもう、母さんの個人口座には送らなくていい」
僕は、母から届いていた「ここに入れてね」と書かれたメッセージのコピーも指で押さえた。口座番号は、通帳のそれと一致している。
「こういうやり取りは、これで最後にしよう」
母は小さく「誤解よ」と言ったが、具体的な説明は出なかった。
母の言い訳と、支払いの切り替え
その日から、支払い方法を切り替えた。父が各社のマイページにログインし、請求書や払込票の写真を送ってくる。僕は給料日にまとめて決済。金額が7万を超えそうなときは、事前に父と見積もりをすり合わせる。
最初の月、父から「今月は合計でここまでいく」と手書きの計算メモの写真が届いた。7万を少し超えたぶんは、父がやりくりすると返信が来た。「お前が無理するなよ」と一言だけ付いていた。
母からの直接の「お金ちょうだい」メッセージには、「家の費用なら父さんに言って」と決めて返す。個人的な買い物や交際費の話には踏み込まない。境界をはっきりさせた。
生活費は父へ、窓口を一本化して安定
二か月もすると、家の中が落ち着いたと父から連絡があった。光熱費の名義を父にまとめたことで、未払いの心配もなくなったらしい。僕の通帳から“母の口座”への7万円の出金は止まったが、請求ごとの支払い履歴で「何にいくら出たか」が確認できるようになった。
母からはときどき「この前は助かったわ」とメッセージが来る。追加の金額要求や、友達の家と比べる話は出なくなった。父が間に入るだけで、話題が「家の必要」に戻るのだと実感した。
その後、少し距離を置いて安定
僕自身の暮らしも、あの電話の前より静かだ。毎月の支払い日は予定に入れておき、必要な分だけ処理する。やることが見えると、余計な不安が減る。
母のことを嫌いになったわけじゃない。ただ、仕送りの通り道を大人同士のやり方に変えた。誰か一人の財布に集めるのではなく、家の費用に直接当てる。それだけで揉めごとはだいぶ減った。
さいごに
お金のやり取りは、言葉より流れでわかります。通帳や明細をみんなで見られる形にすると、疑いがふくらみにくくなりますね。
実家の仕送りでモヤッとしたこと、ありませんか。感情だけで決めず、見えるやり方に変えると楽になります。あなたなら、どう整えますか。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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