娘の七五三を、ずっと楽しみにしていた。
着物も髪飾りも前の週から一緒に選び、前夜は「明日、かわいく撮ってもらおうね」と娘と約束して眠った。
当日の朝は時間どおりに支度を終え、予約の10分前に写真館へ着いた。
ところが、受付で名前を伝えた直後、思いがけないことを言われた。
「今日は少し短くなりますので」
受付にいた男性が、予約表を見ながら言った。
「このあと別のお客様の予約が入ってまして、今日は撮影時間を30分ほど短くさせていただきます」
一瞬、意味が分からなかった。
「予約は60分でしたよね?」
そう確認すると、男性は、
「そうなんですが、このあとのスケジュールが詰まっていまして」と答えた。
事前の電話もメールもない。こちらは60分の撮影プランで予約し、そのつもりで準備をしてきている。
私はもう一度、「こちらの都合ではなく、お店側の都合で短くなるということですか?」と聞いた。
男性は少し困ったような顔をしながら、「今日はそういう形でお願いできれば」と返した。
隣では、着物姿の娘が私の手を握ったまま、じっと大人のやり取りを見ていた。
せっかく楽しみにしてきた日に、ここで言い争いたくはない。でも、何も言わずに受け入れるのも違うと思った。
娘の前で「ちょっと難しいですね」
結局、そのまま撮影は始まった。
最初からスタッフの動きは慌ただしく、カメラマンも何度か時計を見ていた。
「じゃあ次、こっち向いて」
「はい、笑ってみようか」
「もう少し急ごうね」
普段なら写真を撮られるのが好きな娘も、その日はだんだん表情が硬くなっていった。
すると、受付にいた男性がカメラの近くまで来て言った。
「ちょっと難しいタイプですかね。もう少しお母さんのほうで表情をほぐしてもらえると助かるんですが」
その言葉に、今度ははっきり引っかかった。
娘の前で「難しいタイプ」と言う必要があるのだろうか。
私は娘の肩に手を置いた。
「一回、お水飲もうか」
撮影を止めてもらい、椅子に座らせた。帯が苦しくないか聞き、少しだけ深呼吸する時間を取った。
急かされて緊張している子に、「笑って」と言い続けても仕方がない。
このまま流されたら、きっと後悔すると思った。
予約メールを見せて確認した
娘が休んでいる間、私はスマホで予約確認メールを開いた。
そこにはプラン名と、「撮影時間60分」とはっきり書かれていた。
私は受付へ行き、画面を見せながら言った。
「こちらでは60分で予約しています。今日になってお店側の都合で30分に変更するという連絡も、事前にはありませんでした」
男性は黙って画面を見た。
「予約どおりの時間でお願いしたいです。難しいのであれば、なぜ当日になって変更になったのかと、料金を含めてどう対応されるのか説明してください」
できるだけ落ち着いて話した。
怒鳴りたいわけではない。ただ、予約した内容と違うなら、その理由をきちんと説明してほしかった。
男性は少し考えてから、
「確認してきます」と言って奥へ入っていった。
受付にいた別のスタッフが、娘に水を用意してくれた。
「少し休んでからで大丈夫ですよ」
そう声をかけてもらうと、娘も少し表情を緩めた。
「予約どおりで進めます」
数分後、男性が戻ってきた。
「後ろの予約を調整しましたので、最初のご予約どおりのお時間で進めます」
私は、
「ありがとうございます。あと、娘を急かすような声かけはできれば控えてもらえますか。緊張してしまっているので」
と伝えた。男性は「分かりました」と答えた。
撮影が再開すると、今度はカメラマンも少しペースを落としてくれた。
「好きなお菓子って何?」
「その髪飾り、自分で選んだの?」
そんなふうに話しかけてもらううちに、娘の表情も少しずつ戻ってきた。
鏡を見て、自分で頬をつついて笑ってみたり、着物の裾をちょこんと持ち上げたりする。
最後のほうには、私が見たかったいつもの笑顔が出ていた。
その瞬間を、きちんと写真に残してもらえた。
写真は気に入った。でも、違和感は残った
後日、仕上がったデータが届いた。
娘らしい表情の写真もあり、家族で見ながら「これかわいいね」と笑った。
写真そのものには満足している。
ただ、撮影の最初に娘が緊張して固まっていたことや、こちらが何も言わなければ予約時間を半分にされていたことは、写真には残らない。
私は写真館の口コミに、当日の出来事を事実だけ書いた。
「予約当日に撮影時間を短縮すると説明されたため、予約メールを確認して話し合い、最終的には予約どおりの時間で撮影してもらいました。事前に予約内容を確認してから来店することをおすすめします」
感情的な言葉は入れなかった。
これから七五三や記念撮影で利用する人が、同じようなことがあったときに確認できる材料になればいいと思ったからだ。
娘は今でもアルバムを開くと、
「これ、かわいく撮れてる」と嬉しそうに言う。
私はそのたび、「本当だね」と答える。
あの日、言うべきことを言ってよかったと思う。
子どもの記念日は、撮り直せない。
だからこそ、大人の都合で急かされる時間にはしたくなかった。
さいごに
楽しみに準備してきた記念撮影で、当日になって突然「予約より短くなります」と言われたら、戸惑ってしまいますよね。
そんなとき、感情的に言い争うのではなく、まず予約内容を確認して、「何が変更されたのか」「なぜ変更されたのか」を聞くことも大切なのかもしれません。
特に子どもの撮影では、大人にとっては30分の違いでも、子どもが落ち着いて笑えるまでの時間としては大きな差になることがあります。
もし予約当日に突然条件を変えられたら、あなたならどこまで受け入れますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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