夜八時、帰宅途中の夫から家族用タブレットに電話が入る。
「飯はまだか」「俺が稼いでるんだ。言うことを聞け」
台所にいる私への言葉を、中学二年の息子も毎晩聞いていた。やがて息子まで、夫と同じ口調を使うようになった。
「飯まだ? 早くしろよ」
その日はパートが長引き、夕食が三十分遅れた。
リビングでスマホを見ていた息子が、顔も上げずに言った。
「飯まだ? 早くして」
「今出すよ。味噌汁だけ少し待って」
息子は舌打ちした。向かいで宿題をしていた小学四年の娘は、肩をすくめて手を止めた。
注意しても、息子は「父さんだって言ってる」と返す。私は反抗期だからと受け流しかけたが、言葉は日に日に強くなった。
皿が割れた夜
三日後、夕食の支度が少し遅れたときだった。
「いい加減にしろよ!」
息子が小皿を床へ投げた。白い破片が散り、娘が泣きながら私にしがみついた。
私は娘を別室へ移し、けががないことを確認した。息子には、破片へ近づかず自分の部屋で待つよう伝えた。落ち着いたあとで片づけたが、このまま家庭だけで抱えるのは危ないと感じた。
その夜、これまでの発言や行動を日付とともにメモし、担任へ相談する内容を整理した。
翌朝、学校へ相談
翌朝、私は担任へ電話した。
「昨日、息子が皿を投げ、妹が怖がりました。家庭だけでは対応が難しいので、スクールカウンセラーに相談したいです」
担任は息子の学校での様子を確認し、放課後に面談の時間を取ってくれた。まず私が状況を説明し、その後、カウンセラーが息子と個別に話した。
面談後、息子の了承を得たうえで、私も加わった。
カウンセラーが「家で聞いている言い方を、そのまま使っていないかな」と尋ねると、息子はしばらく黙ったあと、うなずいた。
「父さんが母さんに言ってるから、普通だと思ってた」
カウンセラーは、怒りを感じることと、人を怖がらせる言い方や物を投げる行為は別だと説明した。息子は皿を投げたことを謝り、「次はその場を離れる」と約束した。
夫にも同じ話をした
私の同意を得て、担任から夫にも家庭での安全について連絡が入った。その晩、家族四人話をした。
夫は最初、「反抗期だろ」と軽く見ていた。しかし、娘が泣いたことと、息子が「父さんのまねをした」と話したことを伝えると黙り込んだ。
「俺、そんな言い方を毎日してたのか」
「子どもたちは全部聞いているよ」
夫は私と子どもたちに謝った。
「仕事のいら立ちを家に持ち込んでいた。悪かった。もう命令するような言い方はしない」
家族で決めた四つのルール
カウンセラーの助言をもとに、家族でルールを決めた。
・相手を命令で動かさず、頼み方に言い直す。
・腹が立ったら、その場を離れて落ち着く。
・物を投げたり、相手を怖がらせたりしたら、すぐ大人に知らせる。
・食事が遅れる日は先に伝え、できる人が配膳を手伝う。
学校でも、担任とカウンセラーが息子の様子をしばらく見守ってくれることになった。
一週間後、夕食が遅れた日。息子は台所をのぞき込んだ。
「母さん、あとどのくらい? 俺、サラダを出そうか」
娘も笑って食器を運んだ。夫の電話も、用件を落ち着いて伝えるものに変わった。
すべてが一度で解決したわけではない。それでも、家庭の外へ相談したことで、誰かを怖がらせる言動を「よくあること」で終わらせずに済んだ。
さいごに
父親の強い言葉をまねた息子の行動をきっかけに、家族は学校と相談し、言葉と行動のルールを見直しました。子どもは身近な大人をよく見ています。物に当たるなど危険な行為が続くときは、家庭だけで抱えず支援先と安全を考えることが大切です。あなたなら、家庭の変化をどの段階で学校や相談機関へ伝えますか。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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