金曜の夜、LINEに「かんぱーい!」というメッセージとともに写真が届いた。
恋人からだ。男友だちと飲んでるって、にこにこしたスタンプつき。
なのに胸の奥がざわっとした。——この感じ、なんだろう。
「男だけだよ」の言い方が早口で
彼とは同じ会社。私は事務、彼は営業。
社内では交際を公表していなかったけれど、同じフロアだから、だいたいの動きは見える。
ここ最近、彼がやたら口にする名前があった。私の部署の先輩女性だ。
「ただの相談相手だよ」「帰りが一緒になっただけ」。
否定はいつも軽く、ちょっと早口。そこで私も「ふーん」と流した。信じたいから、深追いしない——そんな自分にも気づいていた。
昼休み、先輩が新しいイヤーカフを自慢していた日があった。
光の角度で色が変わるデザイン。そのイヤーカフが私の記憶にやけに残った。
「乾杯!」写真、グラスの反射
届いた写真は、ビールとワインのグラスが並ぶテーブル。
「男友だちと飲み!」とメッセージ。彼は写っていない。彼が撮ったのかな?……そこで指が止まった。
ワイングラスの丸い面に、くっきりと何かが映っている。
拡大していくと、前髪の流れ、長いまつ毛、そして光るイヤーカフ——見覚えがありすぎた。
私の部署の先輩その人。昼休みに見た、あのイヤーカフと同じだった。
「今、電話できる?」と送信
一気に血の気が引いたけれど、深呼吸。ここで取り乱しても、意味が無い。
——一度だけ、冷静に話す。そこで終わらせる。
「今、電話できる?」
数十秒の既読スルーのあと、呼び出し音。彼の声は酔って少し上ずっていた。
「男同士だって。心配しすぎ」
「写真、送ってくれてありがとう。これ、見て」
私はグラスの反射部分だけを切り出した画像を送り、黙った。
「……え?」
「このイヤーカフ、先輩のだよね。今日の昼もつけてた。鼻筋も、輪郭も同じ。
『男友だち』って言い切ったよね」
受話口の向こうで、店のざわめきが遠のく。
「違う、たまたま近くにいただけで——」
「嘘はやめなよ。映ってる」
数秒の沈黙のあと、彼は小さく言った。「……ごめん。隠してた」
「言い逃れできないね」一手で決着
私の中で、カチッと何かがはまった。怒鳴る気持ちは不思議とない。
言い訳を聞くほど、私の時間は安くないから。
「認めたなら、ここで終わり。
明日から業務以外の連絡はしないで。私は、別れる」
「待って、誤解——」
「誤解じゃないよ。写真はあなたが送ってきた。事実だけで十分」
私は通話を切り、彼の通知をブロックした。涙は出なかった。静かに眠気がきた。
青ざめた彼の末路は静かな孤立
週明け、私は上司に席替えを申し出た。
「私的なトラブルがあったので、業務に支障が出ない配置にしてほしい」とだけ伝える。
上司は事情を詮索せず、「わかった」と即答。経理チームの島へ移動が決まった。
廊下で彼と目が合ったが、会釈だけ。彼は何か言いかけて、口をつぐんだ。
昼休み、先輩女性と彼が距離をとって座っているのが見えた。
噂は私から流さない。でも、写真を自慢げに送る人は、だいたいどこでも同じ顔をする。
同僚たちは空気を察し、私の前では私の話だけをした。
彼は次第に一人で食事をするようになり、飲み会の幹事リストからも外れていた。
誰かが処分したわけじゃない。ただ、嘘に笑って合わせる人がいなくなっただけ。
その後
家に帰って、ベランダで小さなハーブを植えた。
スマホの通知は静か。代わりに、ミントの香りが強くなっていく。
週末は友人に会い、「写真一枚で十分だったね」と笑い合った。
「次は、私を疑わせない人を選ぶ」——口に出すと、心が軽くなった。
先輩女性には何も言っていない。仕事では普通に話す。
必要なやりとりを淡々と、余計な詮索はしない。
彼からもアクションはない。たぶん、なにもないだろう。
私の机の引き出しには、新しい付箋とペンが増えた。
境界線を引いたぶん、私の周りはすっきり片づいた。
あの夜、私は証拠を集めなかった。彼が送った一枚で足りたから。
追及を重ねるより、静かに区切るほうが、私には合っていた。
さいごに
嘘は、小さな違和感のときに浮かび上がるもの。事実だけで線を引く一手もありますよね。
恋人の言葉にモヤッとした夜、あなたにも覚えはありませんか。あなたなら、どこでどう区切りますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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