海辺の小さなレストラン。窓の外は夕焼け、旅行用に作ったしおりには今日の予算を書いてきた。「今日はこの金額でね」と朝に決めた数字だ。メニューを開いた夫は、また言った。
「旅行だし、ステーキいくよね?」
私たちは30代の共働き。今回の二泊三日は、共通の旅費カードに積み立て、1日あたりの上限を決めていた。
昼は市場で海鮮丼、観光地の入場料も支払った。レシートを足すと、夜に回せるのは一万円ちょっと。そこで夫が指したのが、1万2千円のステーキだった。
「せっかくの旅行だし、これでいこうよ」
私はメニューの端にある1980円のパスタを見ていた。残りの金額から考えて、このくらいが妥当だと思った。
「お前は節約で」また始まった
「じゃあ私はパスタにするよ」と言うと、夫は笑って言った。
「いいじゃん、君は安いのにして節約しといて。俺は肉いくから」
この感じ、前日もあった。ソフトクリームは「一口で我慢しなよ」、タクシーは「歩ける距離でしょ」。自分の欲しいものは「旅行だし」で通し、私には倹約を求める。
雰囲気を壊したくなくて流してきたけれど、同じ財布から出す以上、どちらかだけが大きく使えば翌日が苦しくなる。しおりの数字が、それをはっきり示していた。
私はパスタを、夫はステーキを注文した。ここまでは夫の言い分どおりにしておく。
「会計、こちらは別で」にする
食べ終えて会計。夫が店員さんに「お会計は…」と言いかけたところで、私は手を上げた。
「すみません、会計は分けてください。こちらのパスタと私のドリンクは、この(旅費)カードで。夫のステーキとセットのドリンクは、こっち(夫)のカードでお願いします」
私は共通の旅費カードと自分の伝票を差し出し、夫の方を見た。「あなたのカード、出して」
夫は一瞬固まったが、自分の小遣い口座のカードを取り出し、店員さんに渡した。店員さんは伝票を二つに分け、処理を始めた。
夫が小声で言う。「え? 一緒でいいじゃん。共通の旅費だよ」
「うん。だから、同じ基準で選んだ分は共通で払うよ」
私はしおりを開き、今日の残り予算を指さした。
「今日はこの範囲にしようって朝に決めたよね。1万2千円のステーキはこの範囲を超える。『旅行だし、好きに食べたい』って言ったのはあなた。食べるのは止めない。その代わり、好きに食べるぶんは自分のカードから」
「なんでそうなるの」夫が止まる
夫はメニュー表を握り直し、「なんでそうなるの」と言った。
「だって、私には節約しろって言ったよね。あなたは贅沢して、支払いは一緒で? それはおかしい」
私は声を張らずに続けた。「同じくらいの価格で選ぶなら全部共通。大きく外れるものは個人負担。どっちにする?」
夫は店員さんに視線を向けたが、「一緒で」とはもう言わなかった。結局、夫は自分のカードで支払い、私は共通カードで1980円と自分のドリンクだけ清算した。
ホテルへ歩く途中、夫がぽつり。「悪かった。ちょっと調子に乗ってた」
私はうなずいた。「明日から、もっと分かりやすくしよう」
翌日から、数字を共有する
翌朝、私はスマホのメモに日別の上限、使った金額、残りを書いて共有した。朝のカフェ代を入れると、今日の残りは8,600円。夫のスマホにも同じ画面が見える。
昼前、夫が「ピザ食べたい」と言う。メニューを見ると1枚1,800円。二人でシェアで十分だ。
「これならいけるね。残りは6,800円」
数字が見えると、私たちは自然と調整できた。夕方、夫が屋台の串焼きを指差したときも、値段と残りを見て「じゃ、一本ずつにしよ」と自分で決めた。
夜のレストランでは、夫の方から言った。「今日は二人で同じくらいのにしよう。俺、魚にする」
「じゃあ私はチキン」伝票は一つ。共通のカードで払った。
その後 旅行がやっと楽しくなった
帰ってからも、外食やレジャーは日別の上限を見える形にした。夫は「数字が決まってると、無茶しづらいな」と言い、どうしても高いメニューを食べたいときは、先に「今日は自分のカードでいく」と宣言するようになった。
私も、我慢ばかりはしない。共通の範囲で楽しめるご褒美をちゃんと選ぶ。
旅行の写真を見返すと、最初の夜だけ夫が気まずそうにしている。でもそれ以外は、二人とも笑っていた。お金の段取りが決まると、思い出は軽くなる。
さいごに
同じ財布なら、同じ基準が必要でしたね。言い合うより、金額とルールを先に見える形にすると整います。相手の「旅行だし」を、支払いにも当てはめたのが効きました。お金のモヤモヤ、あなたにもありませんか。まずは上限を書いてみる、そんな一歩からでも十分ですよ。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。



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