車内の照明がやわらかく揺れ、窓の外には夜の景色が流れていた。
残業帰りで、足が重い。
ようやく座れる。
そう思いながら自分の号車へ入ると、予約していた席にすでに女性が座っていた。
私はスマートフォンの画面をもう一度確認した。
号車も、座席番号も合っている。
「すみません、そこ私の席なんですが」
私は通路から声をかけた。
「すみません。そこ、私が指定している席だと思うんですが」
女性が顔を上げた。
「あれ? 私もここですよ」
そう言って、紙の切符を見せてくる。
そこには確かに「7A」と書かれていた。
私は自分のスマートフォンを見る。
こちらも7A。
一瞬、自分が間違えたのかと思った。
「私も7Aなんです」
「私も7Aなんですけど……」
画面を見せると、女性も少し困った顔をした。
「日付も今日ですよね?」
「今日です」
「じゃあ、なんで同じ席なんでしょうね」
さっきまで当然のように座っていた女性も、不安になってきたらしい。
私は自分の画面をもう一度確認した。
日付。
列車名。
発車時刻。
号車。
座席番号。
間違っているようには見えない。
でも、相手の切符にも同じ席番号が書かれている。
ここでお互いに、
「私が正しい」
と言い続けても仕方がない。
「車掌さんに確認してもらいませんか?」
私が言うと、女性もうなずいた。
二人とも「7A」なのに
しばらくして車掌が通りかかったので、事情を説明した。
「二人とも同じ席番号になっていて……」
私はスマートフォンのチケット画面を見せた。
女性も紙の切符を差し出す。
車掌はまず私の画面を確認し、次に女性の切符へ目を移した。
日付。
列車。
号車。
座席番号。
一つずつ確認していく。
そして、
「ああ、分かりました」
と言った。
女性と私は同時に車掌を見た。
「こちら、一本前の列車ですね」
車掌が女性の切符を指した。
「お日にちと座席番号は同じですが、こちらは一本前の列車の指定席になっています」
女性が切符をのぞき込む。
「え?」
「こちらのお客様が予約されているのは、今乗っている列車の7Aです」
今度は私の画面を示した。
女性は自分の切符を見直した。
「でも、7Aって書いてありますよね?」
「はい。ただ、指定席は列車ごとに決まっています。同じ7Aでも、別の列車なら別の予約になります」
そこでようやく、私にも状況が分かった。
席番号だけを見れば同じ。
でも、そもそも乗る予定だった列車が違っていた。
「時間まで見てなかった……」
女性は切符を見ながら言った。
「一本乗り遅れて、そのまま次のに乗ったんです。席も同じ番号だから、そのまま使えるのかと思ってました」
悪意があったわけではないらしい。
単純に、指定席の番号だけを見ていたようだった。
車掌は、
「この席はこちらのお客様の予約なので、いったんお席を空けていただいて、今後のご利用についてはこちらで確認しますね」
と案内した。
女性は、「すみません。私の勘違いでした」と言って立ち上がった。
「いえ」
私もそれだけ返した。
女性は荷物を持ち、車掌と一緒に通路の先へ移動していった。
ようやく座れた
車掌が私に、「お待たせしました。こちらのお席で大丈夫です」と声をかけた。
「ありがとうございます」
私はようやく座った。
背もたれに体を預けた瞬間、思っていた以上に疲れていたことに気づいた。
スマートフォンを開き、改めてチケットを見る。
列車名。
発車時刻。
号車。
7A。
普段は座席番号ばかり見ていた。
でも、今回のように番号が同じでも、列車が違えばまったく別の指定席になる。
当たり前といえば当たり前なのに、その場になると意外と気づきにくい。
「同じ席です」と言われたら
今回、私も最初は、「二重に予約されているの?」と思った。
相手もおそらく、
「自分の切符に7Aと書いてあるんだから、自分の席だ」
と思っていたのだろう。
もしそこで、お互いが座席番号だけを見て言い合っていたら、余計に疲れていたと思う。
確認してもらえば、違いはすぐに分かった。
席が重なったときに見るのは、番号だけではない。
日付や号車だけでもない。
どの列車の予約なのかまで確認する。
それだけ覚えておこうと思った。
ペットボトルの水を一口飲み、スマートフォンを鞄にしまった。
窓の外には、いつもの夜景が流れていた。
さっきまでの小さな騒ぎが嘘のように、車内は静かだった。
その後
最寄り駅に着くまで、私は席でゆっくり休むことができた。
今回の女性が最終的にどのような案内を受けたのかは分からない。
それでも、少なくとも私たち二人で言い合うより、車掌に確認してもらってよかったと思う。
もしまた自分の指定席に誰かが座っていたら、まず自分の予約を確認する。
それでも同じ席だと言われたら、「一度確認してもらいましょう」と伝える。
それで十分だ。
さいごに
指定席で「自分と同じ座席番号の切符を持っている」と言われると、どちらが間違っているのか分からなくなることがあります。
そんなときは、座席番号だけでなく、日付、列車、発車時刻、号車などを落ち着いて確認することが大切です。
お互いの主張が食い違う場合は、その場で決めつけず、乗務員に確認してもらうほうが早く解決できることもあります。
自分の指定席に別の人が座っていて、相手も「私の席です」と言ったら、あなたならまず何を確認しますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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