駅近の2DKで、居酒屋で意気投合した女性とルームシェアを始めることになった。賃貸契約は彼女の名義。鍵を受け取った夜、彼女が言った。
「私、お金の管理得意だから」
そのひと言が、あとで重くなるなんて思いもしなかった。
「生活費、全部渡して?」
入居してすぐ、彼女が提案してきた。
「家賃も光熱費もネットも、ぜーんぶ私にまとめて渡して。私が払っとくから」
「ちまちま分けるの、効率悪いでしょ」
勢いに押され、私は毎月の約束日に封筒で渡した。家賃の私の負担分、光熱費、共益費、ネット代。自分のアプリには出費だけ控えたが、彼女から明細が出てきたことは一度もない。
「レシートは共有しようよ」
共同の消耗品も、口を出された。
「牛乳はこっちの安い方」「トイレットペーパーは12ロールで十分」
「それ高い。共同のなんだから」
私が「じゃあレシートは共有しよう」と言うと、彼女は肩をすくめた。
「いらないでしょ。私がまとめてるんだから。あなた細かいの苦手じゃん?」
納得はしていないのに、揉めたくなくて引き下がった。個人のものは自腹、共同のものは彼女の指示どおり。そう決めたはずが、私物の洗剤にも口を出されるようになった。
「その香りやめて。私の洗濯物にも混ざるから」
嫌だなと思うことが増えた。でも、この時点で、渡したお金が使われていないとは思っていなかった。
朝、電気がつかない
ある朝、部屋の電気をつけてもつかない。何度試しても同じ。
「ねえ、電気がつかないけど」
寝癖のまま出てきた彼女は面倒くさそうに言った。
「工事じゃない? たまにあるよね」
ポストには電力会社からの送電停止予告通知のお知らせ。理由は未納。
手が止まった。紙に書かれた番号にすぐ電話をかける。契約者名(彼女の名前)を伝えると、担当の人ははっきり言った。
「数か月分の未納が続いたため、本日から停止しています」
横で聞いていた彼女が割り込む。
「昨日振り込んだんです! 反映が遅いだけ!」
私はスマホを持ちながら彼女を見た。担当の人が続ける。
「確認しましたが、入金はありません」
管理会社「滞納が続いています」
私は管理会社にも連絡した。担当者が来て、玄関先で状況を説明した。
「電気だけでなく、家賃も延滞が続いています。以前から契約者の方へお伝えしていました」
彼女は早口になる。
「違うんです、手違いで! ね、あなたも言って。毎月お金もらってるって」
私は封筒で渡した月と金額をノートに控えていること、送ったメッセージに「今月分」と書いた履歴があることを伝えた。担当者は一度うなずき、書類を見せた。
「繰り返しの滞納は契約違反に当たります。契約者様に退去手続きをお願いします」
彼女はスマホを握り直し、言葉が途切れた。
「払うから! 今日まとめて! だから退去は待って!」
担当者は首を横に振った。
「何度もお約束いただきましたが、守られていません。手続きを進めます」
「そのお金、どこに行ったの」
部屋に戻ると、玄関には宅配の箱がいくつも積まれていた。新しいコート、スニーカー、家電の箱。深夜のテイクアウト、毎週届く荷物、そして「払っとくから」の口癖が頭に並ぶ。
私は聞いた。
「私が渡した分、どこに行ったの」
彼女は口を曲げて言い返した。
「あんたも使ってたでしょ。私だけのせいにしないで」
違う。私は自分の分を払っただけ。共同分は、彼女がそう言うから渡していただけだ。
私は管理会社に、月末で私が退去する旨を連絡した。彼女にはその場で伝えた。
「もうあなたに預けない。私は今月末に出るから」
その後
数日後、彼女宛てに正式な退去通告が届いた。彼女は何度か私の部屋のドアをノックしてきた。
「今月だけ助けて」「半分でいいから」
私は「無理だよ」とだけ返した。給水はその日の夕方に再開されたが、支払いの通知は彼女宛てに届く。
月末、私は荷物をまとめて出た。新しいワンルームは狭いけれど、家賃は自分の口座から自動引き落とし。電気・ガス・水道も自分の名義で契約した。
さいごに
お金の流れが見えない同居は、いつかほころびます。レシートや明細、共有ルールを最初に決めておくと安心ですよね。
「任せて」に流されやすい場面、あなたなら何を確認しますか? 次に誰かと暮らすなら、どこまで共有して、どこから分けますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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