夫「歩けないの?演技でしょ(笑)」→主治医の説明に「え?」態度が一変したワケ

       
体験談
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夫「歩けないの?演技だろ」→主治医の説明に「え?」態度が一変したワケ 体験談

検査入院の二日目。点滴台を引きながら洗面台へ向かおうとして、右足が床から離れなかった。力を入れても、言うことをきかない。

見舞いに来ていた夫は、私の手すりをつかむ手を見て言った。

「歩けないの? 演技でしょ(笑)」

口の中が乾いた。無理だ。足に力が入らない。

「歩けないの?演技でしょ(笑)」

朝の診察では「大きな変化はなさそう」と言われ、私はその勢いで夫に「今日はわりと元気」とメッセージを送っていた。だからだろうか、夫は「元気なら明日の予定は戻せるな」と勝手に計算していたらしい。

「支えて。立てない」

私がそう言うと、夫はベッド脇の椅子から立ちもせず、スマホを見た。

「看護師さんにやってもらいなよ。俺、仕事早退して来てんの。大げさにしないで」

私は手の届くところにあったナースコールを押した。こんな時に言い合いをしている場合じゃない。転びそうな自分がいちばん分かっている。

「支えなくていいから」

「どうされました?」と入ってきた看護師さんに、右足に力が入らないこと、さっきまで普通に歩けていたのに急に動かせなくなったことを伝えた。ベッドへ戻ろうとして体がぐらつくと、看護師さんは夫に向かって短く言った。

「今は触らないでください。私が付き添います」

夫は不満そうに眉を上げたが、私の体がふらつくのを見て、椅子を少し引いた。

看護師さんは手際よく支えてくれて、体位を整えながら脈を測り、足先の動きを見た。

「右の足首、手前に曲げられますか?」

「…うまくいかない」

「分かりました。主治医をお呼びします」

夫は小さく舌打ちした。予定していた週末の用事が飛んだことを、来る前から愚痴っていた。「入院って言っても検査だけだろ」とも。

主治医「今は立たせないで」

主治医は同じフロアを回診中だったらしく、数分で病室に入ってきた。私の顔色を見て、まずベッド柵を上げる。足先を軽く叩いたり、押し返してみたり、いくつかの指示が続いた。

「右の足首の力が落ちています。膝の反射も弱いですね。今は立たせないでください」

主治医は看護師さんに検査の手配を指示し、私に向いて言った。

「神経の炎症が起きている可能性があります。このフロアでできる検査をすぐに入れます。ご主人にも、あなたの同意があれば今の状態と安静が必要ということについて説明しますが、よろしいですか」

「お願いします」

ベッド脇で腕を組んでいた夫が、そこで初めてスマホをポケットにしまった。

夫「どういう状態なの?」

主治医は、夫に向かって順を追って説明した。右足の筋力が明らかに落ちていること、反射が出にくくなっていること、無理に歩かせると転倒や悪化のリスクがあること。検査の流れと、その間の禁止事項もはっきり伝えた。

「さっき『演技』とおっしゃったようですが、今見えているのは意思の問題ではなく、神経が筋肉にうまく命令を送れていない状態です。ご本人の意思ではどうにもならないので、立たせようとしないでください」

夫は目を瞬かせ、視線を下げた。

「…すみません。そんな状態だとは思わなくて。俺、さっき、ひどいことを言いました」

「分かっていただければ大丈夫です。検査と治療に協力してください」

主治医が出ていくと、夫はベッドの柵に手を添えた。

「悪かった。手、握ってていい?」

私はうなずいた。夫の手は少し冷たかった。

夫の変化は、ここから始まった

検査はその日のうちに進んだ。血液検査、MRI。結果の説明で、炎症を示す所見があり、点滴治療が始まった。主治医は改めて安静の重要性を伝え、夫にも同席してもらった。

「わかった。俺、会社に連絡する。しばらくは通院の送迎もやるから」

夫は職場へ電話をかけ、予定していた私用もキャンセルした。病室では水の補充やリモコンの位置を整え、検査の移動は看護師さんやスタッフに任せるように徹底した。

「起きるときはボタン押すから言って。看護師さんたちに任せるから」

以前なら「ほら、歩けるって」と腕を引いていた人が、いちいち看護師さんに確認を取るようになった。私が「トイレ」と言うと、「今はポータブルでって先生言ってたよ」と、嫌な顔をせずにカーテンを引いた。

数日後、症状は少しずつ落ち着き、私は退院して通院治療に切り替わった。家では段差にマットを敷き、必要な動線を片づけ、台所の重い鍋は夫が手の届きやすい棚に移した。

「最初に疑って、ごめん。今は無理しないで」

謝罪は一度きりでいい、と私は思っていた。夫はそれ以上言い訳をしなかった。やることを具体的に伝えれば、きちんと対応する人なのだと、結婚してからようやく腑に落ちた瞬間でもあった。

その後、私たちの歩幅

通院の待ち時間、夫は「次なにする?」と予定ではなく、体調を基準に話すようになった。私も「今日はここまでにする」と言えるようになった。

病院でのあの日、第三者のはっきりした言葉が必要だった。家の中だけでは、私の「無理だ」は、時に届かない。権限のある人が「今は立たせないで」と言ってくれたことで、私も夫も、同じ方向を向けたのだと思う。

さいごに

体調のつらさを身近な人に疑われると、治療中の心まで消耗します。説明しても理解されないとき、あなたなら医療者や家族の誰に助けを求めますか?

※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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