検診の帰り、玄関を開けると見慣れない段ボールが私の部屋の前に積まれていた。中身は棚やラック。横には義妹の名前の荷札。足元のむくみを気にしながら荷物をまたいだ私に、居間から義妹が笑顔で手を振った。
「ちょうど良かった。部屋、今からもらうね」
妊娠八カ月、夫の実家で同居中。嫌な予感は、当たった。
「今すぐ出てって♪」笑顔の命令に固まる
義妹はネイルが剥がれた指で段ボールを叩いた。「ネットでアクセ売っててさ、在庫と撮影の場所がいるの。居間はお父さんがうるさいし。お姉さんの部屋、昼は空いてるでしょ?妊婦なんだから、むしろ実家で甘えれば?」
冗談だと思って笑いかけた私の前に、夫が割って入る。「あんまり波風立てるなよ。妹が困ってるんだ。部屋は妹に使わせてやって」
「え、私の寝る場所は?」
「布団ぐらい、どこでも敷けるだろ。今日中に片付けて」
義妹は腕を組み、にやっとした。「そうそう、今すぐ出てって♪」
「波風立てるな」夫まで便乗。私が担ってた日常
その日、産院で医師に「お腹が張りやすい。家事を減らして安静に」と言われたばかり。けれど、私がここで担っていたのは、毎日の買い出しと調理、週一の義父の通院送迎、光熱費と食費の私の負担分(三万円)を義父の口座に入れること。冷蔵庫には私の字で献立メモ、義父の診察券は私がまとめていた。
「せめて、話し合いの時間を作って。さっき産院で安静だと言われたばかりだよ」と伝えても、夫は眉をひそめるだけ。「大げさだな。俺の家なんだから、俺の決めた通りにして」
この家は義父の持ち家だが、夫は「実家=自分の家」という感覚で言う。
義妹はスマホをいじりながら、「夕方、彼が荷物運ぶからね。早めにお願い♡」
無理だ。ここで押し返しても、私の体がもたない。
「了解です」安静指示もあり、私は実家へ
私は荷物を最小限まとめ、母に電話した。「ごめん、今日これから行ってもいい?」
出発前、義父の部屋をノックした。「急で申し訳ないのですが、産院で安静を言われました。しばらく実家に戻ります。これまで私が入れていた三万円と、買い出し・送迎は止めます。病院の予約カードはここにあります。タクシー会社の番号も書きました」
義父は目を丸くした。「そんな状態だったのか。知らなかった。無理をさせたな」
台所に立つのが当たり前みたいになっていて、細かい段取りまでは伝えていなかった。食事や送迎を私が段取りしていたことは分かっていたようだが、どこまで私が一手に引き受けていたかまでは把握していなかったのだと思う。
私は夫にメッセージを送った。「あなたの言う通り、実家で休みます。家事と費用の管理は、今日から二人でお願いします」
玄関で義妹がひらひら手を振る。「助かる〜。鍵だけ置いといて」
私は合鍵を義父に手渡し、母の車に乗り込んだ。
数日で回らない。「米がない」「送って」通知の嵐
一日目の夜、夫から短い連絡。「夕飯どうすんの」
「私は実家で食べます。そっちは二人で決めて」
二日目の朝、義妹から。「今日お父さんの病院、車出して」
「申し訳ないけど、今は行けません。病院名とタクシーの番号、義父さんに伝えてあります」
昼過ぎ、義父から電話が来た。「タクシーで行ったよ。君が安静にする必要があり実家に戻ったと受付に話したら、家族の誰かが来なくても大丈夫だと言われた。ありがとう」
三日目には、夫が慌てた声で「電気とガス、払い方分からない。米もない」と言い、義妹が「撮影用の白い布どこ?カメラの電池も切れた」と続いた。
私は短く返す。「私はもう管理していません。各自でお願いします」
義父「出て行くのは、どっちだ」妻に退去を求めた
四日目の夕方、義父から私に連絡があり、私の母にも来てもらい、話し合いになった。居間に入るなり、義父は夫と義妹を見た。
「彼女に『今すぐ出て行け』と言ったそうだな。結果、家はどうなった。食事も買い物も、誰も段取りできない。通院もタクシーに頼んだ。お前たちが“当たり前”と思っていたものを、全部彼女が担っていたんだ」
夫は口ごもり、義妹は小声で「だって…」
「だって、じゃない。妊婦に無茶を言ったうえ、家の支払い管理も家事も彼女にまかせていた。出て行くべきは彼女じゃない。お前たちだ」
義父は決めたことをはっきり告げた。「同居は終わり。お前(息子・主人公から見て夫)は自分で部屋を借りろ。○○(義妹)、お前も自分の部屋で好きにやれ。家に入れてもらっていた三万円は今月から不要だ。鍵は私に返しなさい。彼女には謝れ」
夫は小さく頭を下げた。「悪かった。軽く考えてた」
義妹も「ごめんなさい」と視線を泳がせ、バッグから鍵を出した。
夫と義妹の末路。支えが消えた現実
ほどなくして、夫は会社近くに安いワンルームを借り、義妹は友人とシェアの部屋に移った。義父は配食サービスと週一の家事代行を手配し、「プロに頼むのも悪くないな」と笑った。
義父は私に改めて電話で頭を下げた。「本当にすまなかった。彼らの暴走を止められなかった。出産までは心配せず、実家で休みなさい」
夫は時々、果物を持って私の実家に来ては「ちゃんと向き合う」と言う。夫婦のことは産後にあらためて話し合うことにした。私は「今は無理をしないことが最優先。会うのは昼間だけ」と決めた。
その後
静かな部屋で、ベビー服をたたむ。検診の帰りは、母と喫茶店で甘いものを分け合う。義父の暮らしは外部サービスで整い、私のスマホには「今日も大丈夫だ」と短い連絡が届く。
あの日、私は「了解」と言って席を立っただけ。けれど、私の手が抜けると何が落ちるのかは、家のほうがよく覚えたはずだ。
さいごに
無茶な命令に、あえて従って離れる。そうすると、見えていなかった家事やお金の重さがはっきり出ますね。妊娠中ならなおさら、守るべきは体と赤ちゃんです。
頼られっぱなしでしんどいとき、あなたも一度、距離を取る選択を考えたことはありませんか? どこまで背負うか、誰となら支え合えるか。心と体に合うやり方を選んでいきたいですね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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