朝の門の前は、子どもたちの声と、ママたちの立ち話で満ちている。
娘はワンピースが好きで、今日もラベンダー色を選んだ。
私はいつものように手を振り、送り出すだけのつもりだった。
門の前で『洗ってるの?』
その時だ。
「またそれ?洗ってるの?」
同じクラスのママが笑って言った。園で何度か一緒になり、よくしゃべる人だ。
「洗ってますよ。色違いなんです」
私は短く返した。彼女は肩をすくめて、別のママに向き直る。
言い返しはしなかった。
娘の耳に残す言葉じゃないと思ったからだ。
門の横でからかいが続く日
それから数日、彼女は似た調子で言ってきた。
「また?本当に好きね、それ」「替えあるの?」
笑いながら、でも目だけこちらを見る。
うちの娘は肌が弱い。
合わない素材だと、汗をかいただけで首元をかきむしってしまう。試行錯誤して、綿100%で縫い代がやさしい同じ型のワンピースを色違いでそろえた。タグは全部外して、洗い替えも多めに置いてある。
担任の先生には入園前に相談して、着替えの置き方や、肌着の素材も確認した。連絡アプリにも「綿の同型を色違いで使います」と送ってある。先生の「承知しました。配慮します」という返信もスマホに残っている。
門の前で言い返しても、ただの言い合いになるだけだ。当面は、娘が耳にしないよう、あいさつを済ませたらすぐ列から離れるようにした。
ちょうど来週、役員の打ち合わせがあった。クラス委員2人と、運動会係の私と、もう1人。彼女も委員に入っている。
娘の体質を他の保護者に広く説明する必要はない。私は担任に事情を伝え、次の役員打ち合わせ後に、担任同席で本人と短く話す時間を設けてもらった。
担任同席で、短く伝えた
打ち合わせが終わり、他の役員が帰ったあと、会議室には担任と私たち二人だけが残った。
私はまず、娘の前で服をからかう言葉を繰り返さないでほしいと伝えた。詳しい症状を話す必要はなかったが、「肌の事情で園と相談して選んでいる服です」とだけ説明した。担任も、「服装については園で把握しています。送迎時に他のお子さんや保護者の服装をからかう言葉は控えてください」と添えた。
彼女はしばらく黙り、「そんな事情があるとは知らなかった。ごめん」と小さく言った。
「事情を知らなくても、『洗っているの?』と娘の前で言われるのは困ります。服装いじりは、今日で終わりにしてください」
彼女は「分かりました」とうなずいた。話は数分で終わり、娘の詳しい体質や先生とのやり取りを、ほかの保護者に見せずに済んだ。
その後、朝の門は落ち着いた
翌日から、門の前は静かだった。
彼女は私を見ると会釈だけして、子どもに視線を向けるようになった。
からかいがなくなると、娘も門の前でそわそわしなくなった。
『終わり』にしたのは服装いじり。あいさつや一言のやりとりは残ったが、話題にすることはなくなった。
「今日は水色にしたの?」と聞くと、嬉しそうにうなずく。
ある日、彼女がふいに言った。
「その色、似合ってるね」
返事を待たない、ほんの一言。でも、もう十分だった。
私も「ありがとう」と返し、娘の手を離した。
朝の時間が、元の穏やかさを取り戻しただけだ。
さいごに
子どもの前で繰り返されるからかいは、当事者同士だけで解決しようとせず、落ち着いて話せる場と同席者を選ぶことが大切です。あなたなら、相手にやめてほしいことを、いつ、誰と一緒に伝えますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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