朝からお弁当を詰めて、水筒に氷を足した。子どもはキリンのぬいぐるみを抱えて玄関で跳ねている。今日は、みんなで動物園。私は7人乗りの車を出す約束で、前の夜に行程表までグループに送ってあった。
スマホが震えたのは出発一時間前。「今日は大型モールに変更ね♪運転よろしく」。目を丸くした。
「今日はモールに変更ね♪」
送り主は里奈。同じ保育園のママ友で、何かと仕切りたがる。理由は「下の子がベビーカーで動物園は大変だし、みんなもラクでしょ」。天気は快晴、前売り券は各家庭でもう買ってある。
私はグループに、前夜送った行程表をそのまま再送した。「8:30集合→10:00到着→お昼は芝生で→14:00ふれあいコーナー→16:00解散。高速・駐車場・ガソリンは割り勘で確認しているはずだよね?」
すぐに里奈から電話。「私が幹事なんだし、今日はモールで統一しよ?運転はお願いね」
「運転よろしく、当然でしょ」
ここ最近、里奈は小さな変更を当日にねじ込んできた。集合場所を自宅前に変えたり、帰りに寄り道を足したり。私はそのたびに合わせてきたけど、今日は目的地ごとひっくり返す話だ。
「前売り券、ムダにしちゃうよ」と言うと、里奈は笑って「また行けばいいじゃん。今日はモールで服も見たいの。子どもはどこでも遊べるし」と軽い。
そこへ、別のママ友・美穂からメッセージ。「もし動物園にこだわらないなら、モールでも…運転お願いできる?」——里奈が「みんな了解済み」みたいに言ったんだろう。
少し間を置いて、前夜のチャットのスクショをグループに貼った。費用の割り勘と、目的地・タイムテーブルがはっきり写っているやつ。「私はこの予定で準備しています」とだけ添えた。
里奈は「だから今日は変えるってば。運転してくれたら、駐車場代は出すから」と言い出す。いや、そういう話じゃない。
「OK、私は降ります」
私は電話に出て、声を落ち着かせた。「目的地を当日に変えるなら、今日は参加しません。車も出しません」
沈黙のあと、里奈は「え? ちょっと待って。車がないと行けないじゃん」と慌てた調子になる。
「昨日までの約束なら出すよ。でも今日は違うから。子どもに説明するのは各家庭でお願い」
通話を切って、グループにも同じ文面を送った。子どもとの約束まで変える必要はない。私はグループの送迎からは降り、親子二人で予定どおり動物園へ向かった。キリンを見上げた子どもは、「来られてよかった」と笑った。
「勝手に決めないでよ」
その後のグループは、里奈と他のママたちのやりとりで埋まった。「なんで当日の朝に言うの?」「うちの子、動物園って言ってる」「前売りどうするの」。
里奈は「みんなのためにラクな方にしただけ」と押し通そうとする。でも「みんな」の中に、子どもも、車を出す私も入っていなかったことが、スクショひとつで見えてしまった。
翌週、保育園の送迎で顔を合わせたとき、美穂が里奈に言った。「勝手に決めないでよ。人の車に乗るなら、決めた予定は守らないと」
里奈は目を泳がせて「じゃあ次は私抜きで決めて」と投げ気味に言って、早々に帰っていった。
「次は動物園リベンジしよう」
数日後、同じメンバーから「次は動物園リベンジしよう。行き方は各自で」と新しいスレッドが立った。段取りは持ち回り、美穂が全員の希望を聞いてから日時を提案。確認の合図をもらってから固定する方法に変えた。
私は「車は出せるときだけ。目的地や時間が変わるなら今回は見送るね」と最初に書いた。曖昧にしない方が、むしろ気楽だ。
里奈はそのスレッドには入らなかった。園では会えば挨拶はするけれど、行事の計画は別の保護者たちと立てる。子ども同士は相変わらず砂場で並んで遊ぶ。それで十分だと思った。
当日朝の“行き先変更”は、私ひとりが我慢して飲み込めば丸く収まる話じゃなかった。降りると決めて一歩引いたら、どこが非常識だったのかが、自然に浮かび上がっただけだ。
さいごに
当日に約束を変えると、誰かの準備や負担が丸ごとムダになります。無理に合わせず、今回は降りると決めるのもひとつの手ですね。
子どもの予定が絡むと、言いにくい場面も多いもの。あなたなら、どこで「それは無理」と伝えますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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