父の寝息が落ち着いた夜、キッチンで明日の投薬表を並べていると、スマホが鳴った。表示は母の妹、私の叔母。
「娘なら夜の見張りも当然でしょ。若いんだから」
嫌な気分になった。父の前では言えない言葉だ。
「娘なら夜も当然でしょ?」
母が亡くなってから一年、私は在宅で父の介護を続けている。週に数回はヘルパーさん、通院は私の有給で付き添い、足りない時間は近所の買い物代行を頼む。
そこへ、母の妹である叔母が頻繁に連絡してくる。
「女なら24時間付き添えるでしょ」
「施設に預けるなんて親不孝」
「ヘルパー代、もったいないわよ」
最初は「気にかけてくれてるのかな」と思おうとした。でも、実際に家へ来ると違った。
「鍵、開けるね」勝手に上がり込んだ朝
ある早朝、インターホンも鳴らさず、玄関が開いた。合鍵は、母が元気だったころに渡していたらしい。
「来てあげたわよ。まずはこの健康茶、飲ませなさい」
戸棚を勝手に開け、入浴用の手すりの位置を変え、デイの連絡帳まで広げる。
父は小さく笑ったが、湯のみを両手で握ったまま、私の顔を見なかった。台所の端の紙袋からは、占い札や大量のサプリまで出てきた。
「デイサービス?あれはサボりに行くところよ」
「お父さん、甘えちゃダメ。娘がやるもの」
私は「訪問のときは事前に連絡してください」と伝えたが、叔母は肩をすくめた。
「家族でしょ?合鍵あるんだし、いつでもいいじゃない」
父のひと言「もう来ないで」
叔母が帰ったあと、父がわたしを呼んだ。布団の端をつまんだ手が震えていた。
「もう、来ないでほしい」
この一言で決めた。父が怖い思いをしてまで我慢する理由はない。
「分かった。もう入れない。私が止める」
次に会うのは、父が居間にいない時間、玄関の外だけ。合鍵は回収する。置いていった物は返送する。訪問は事前連絡の上、玄関対応に切り替える。
ここまでにかかった費用と時間を、手元の領収書とスケジュール帳でまとめた。ヘルパー週3回で月およそ12万円、送迎タクシーと通院で月2万円、私の有給は月2日。金額と回数を書き出しておくと、話が早い。
「合鍵、返して」玄関で止めた
約束の時間、叔母はいつもの勢いで現れた。父はデイの日で家にいない。
玄関を開け、私はカギ受けの小皿を指した。
「合鍵、返してください。父は無断の出入りを望んでいません」
叔母の眉が上がる。
「え?家族なのに。あんた、なに勝手な…」
私は続けた。
「今日から訪問は事前連絡で、玄関までにします。中には入れません」
叔母は舌打ちしてバッグを探り、鍵を出した。
「はいはい、返せばいいんでしょ」
私は受け取り、用意していた封筒を差し出した。中には叔母が置いていった品の一覧メモのコピーと、返送先の確認用メモが入っている。
「置いていった物は、こちらの一覧の通り、着払いで返送します。次からは置かないでください」
「口出すなら費用を」叔母の反応
叔母は腕を組み、見下ろすように言った。
「で?これからどうするのよ。娘が夜に見ればいいじゃない。私も忙しいの」
私はまとめた紙を見せた。項目ごとに費用と時間を書いてある。
「口を出すなら、費用と当番表をご用意ください。ヘルパー週3回で月12万、通院の付き添いは月2回。私も働いています」
叔母が言いよどんだ。
「お金は…その、ちょっと。うちは教育費でさ」
「では、訪問や段取りの口出しは結構です。父の希望は『来ないでほしい』です。意見があるなら、費用か当番で参加してください」
叔母はしばらく黙り、視線を外した。
「…好きにすれば」
「はい。では事前連絡がない訪問は、お断りします」
それだけ伝えて、私はドアを閉めた。大声は出さない。決めた決まりを伝えた。
「連絡制で行きます」その後
その日を境に、叔母の突然の訪問は止んだ。数日後、置いていった健康茶や札は、一覧を同封して着払いで返送した。「家庭の判断で管理します。受け取りは不要です」と一言添えて。
代わりに、いとこ(叔母の子)からメッセージが来た。
「母がごめん。私なら買い物当番できるよ。リスト出して」
私は週に一度の買い出しリストと、通院日の送迎をお願いした。いとこはすぐに日を確定し、実務的に動いてくれた。
父の表情は目に見えて落ち着いた。夜のトイレ介助のあと、「悪いな」と言いながらも、よく眠るようになった。玄関の鍵は、私と父の二本だけ。インターホンが鳴る回数も減った。
叔母からはその後、「冷たい」と短いメッセージが一度だけ来た。私は、前に送った訪問ルールの画像をそのまま送り返した。
「事前連絡の上、玄関まで。費用か当番での参加歓迎」
返事はなかった。
さいごに
「家族だから」と踏み込みすぎると、介護の家はすぐに疲れます。玄関での決まりや、費用・当番を言葉にするのは有効ですね。似た圧に悩んだら、まず何を決めますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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