義兄の妻である義姉が「介護のことは私が仕切る」と言い出したのは、義母が施設に入居して半年が過ぎた頃のことだった。
私はその言葉を、最初はむしろありがたいと受け取っていた。——まさか、あんな夜が来るとは思いもしないで。
義姉「口出しは結構です。ちゃんとやってます」
義母の施設費は月に約15万円で、義母自身の貯金から支払うことになっていた。
義姉が「管理は私がやるから」と言って義母の通帳を預かった翌月、施設のスタッフさんから「今月のお支払いがまだ…」という連絡が届くようになった。
最初は「振込日がズレただけ」と思っていた。でも2ヶ月、3ヶ月と続くと、さすがに胸がざわつく。
「お義姉さん、施設から連絡が来ていて……」と夫を通じて確認してもらうと、返ってきたのは冷たい一言だった。
「私がやると言ったんだから、口出しは結構です。ちゃんとやってます」
それ以上、踏み込めなかった。
「3ヶ月分の遅延があります」施設から聞いた現実
夫は義兄と仲が悪いわけではないけれど、義姉のことになると途端に腰が引ける。
「まあ、お義姉さんも忙しいんだろ」と言うだけで、動いてくれない。
——ならば私が、と思った。
施設の担当者さんに個人的に連絡を取ると、「3ヶ月分の遅延があります。催促のお手紙も出したのですが…」と申し訳なさそうに教えてくれた。
頭が真っ白になった。義母が一生懸命貯めてきたお金はどこへ行ったのか。義姉は何をしているのか。でも証拠もなく、直接問い詰めることもできない。
そんなある夜、面会に行った帰り際、義母が私の袖をそっとつかんだ。
義母「あなただけに、話しておきたいことがある」
「もうすぐ面会時間が終わりますよ」とスタッフさんに声をかけられた直後のことだった。
義母は声をひそめて、こう言った。
「あのね。タンスの二段目の引き出しの奥に、通帳がもう一冊ある。あなたたちへのお礼の気持ちだから、好きに使っておくれ」
そして少し間を置いて、続けた。
「お義姉さんのことは、責めないでやってほしい。あの子も、余裕がないんだと思うから」
私は返す言葉が見つからなかった。
義母は施設の支払いが滞っていることを、とっくに気づいていた。それでも義姉を責めず、私には「ありがとう」を伝えようとしていた。
——この人は、いったいどれだけのものを、ひとりで抱えてきたんだろう。
涙をこらえながら「わかりました、ありがとうございます」と答えるのが精いっぱいだった。
その後、夫と改めて義兄に話し合いを求めた。支払いは私たち側が立て替えながら、管理を引き継ぐことになった。義姉については、詳しい事情はわからないままだ。
でも義母の「責めないでやってほしい」という言葉が、ずっと胸に残っている。
さいごに
お金のことで揉めるなか、義母が最後に絞り出した言葉は「責めないで」だった。自分よりも家族の仲を気にかけていたのかもしれません。そんな義母の気持ちに、胸がいっぱいになった人も多いのではないでしょうか。介護にまつわるお金のこと、あなたの周りにもありますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。



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