夕方の台所。煮物の湯気のむこうで、夫のスマホが何度も震えた。新しい香水の匂い、鼻歌までついている。嫌な予感は、流しの水音にも消えなかった。
「同じクラスの保護者と飲むだけ」違和感の始まり
「同じクラスの保護者と、ちょっと飲むだけ」
そう言って出ていく背中は、家にいるときよりもどこか弾んでいて、足取りまで軽やかだった。
帰宅は深夜。翌朝、ランドセルの名札を作っている横で、夫のタブレットに通知が並ぶ。
「次は週末ね」「あなたの方が落ち着く」。名前は出ていない。でも、行事で見かけるあの人の話し方に似ている。指が止まった。
夫「来月入籍するから」暴走宣言
その週末。夫はコーヒーをすすりながら、当たり前のように言った。
「来月には入籍するから、離婚届は俺が出しとくわ♡」
「誰と?」と聞くと、夫はカップを置かずに横を向いたまま。
「言わせるなよ。○○(息子)と同じクラスのママの一人だよ。向こうの家庭も話は通ってる。君は実家に戻ればいい。生活費? それは今月で終わり」
鍋の火を弱め、コンロの前に立ち直した。理屈がむちゃくちゃだ。大声で返せば一瞬は楽だろう。でもそれで何かが進むわけじゃない。私は流し台の布巾をたたみ直し、次にやることを決めた。
私「窓口で確認します」不受理の届出へ
翌朝、子を送り出すと、その足で市役所へ向かった。総合案内で「離婚届不受理申出をしたいです」と伝えると、戸籍の窓口へ案内された。
職員さんは手順をひとつずつ示してくれた。申出書に記入し、本人確認を済ませる。提出のあと、控えを受け取る。
「これで、勝手に離婚届を出されても受理されません」と職員さん。
封筒をバッグに入れると、肩の力が少し抜けた。ここまで来れば、急に家を追い出される心配はない。
夫「今日出してくる」→窓口の一言
数日後、夫からメッセージが来た。「今日、離婚届出してくる」
私は短く返した。「提出先、教えて」
夫はスタンプの後に「市役所。もう全部俺がやるから」と言ってきた。
私は「そう。じゃあ私は窓口で確認します」とだけ送った。
夕方。ドアが開いた気配のあと、夫は玄関で靴を脱ぎ忘れて立ち尽くしていた。手には折れ目のついた用紙。
「できなかった。『不受理申出が出ています』って。なんでだ」
私は台所からコップの水を持ってきて差し出した。
「勝手に進められても困るよ」
夫は紙を握ったまま、何か言いたそうにしていた。
連絡は弁護士へ。取り決めを紙に
その夜、私は告げた。「これからの連絡は、弁護士を通してください。直接はやめて」
翌日、無料相談で当たった弁護士事務所に正式依頼。内容証明が夫のもとへ送られ、以降のやり取りは弁護士同士になった。
書面には次が入った。
- 子の親権と監護は私とすること
- 養育費の金額と振込日
- 別居中の生活費(婚姻費用)の分担
- 子の前で相手女性に会わせないこと
感情ではなく、必要なことだけ。夫からは「話が違う」「こんなはずじゃなかった」と連絡が来たが、返信はすべて先方弁護士へ回した。
学校であの人を見た日、私は追わない
数週間後、夫は荷物をまとめて出ていった。PTAの集まりで彼女を見かけた日、彼女は私と目が合う前に席を外した。私は追わない。子の連絡帳と提出物だけをカバンに戻し、いつも通りに帰った。
家の中も少しずつ整える。夫の歯ブラシを片付け、夫のマグカップを棚の奥へ移した。集合時間のメモを冷蔵庫に貼り、夕方の連絡は学校アプリで済むようにした。
子と私の暮らしを立て直す
朝、トースターの前で子が「今日はジャム」と笑う。帰り道は自転車で歌を一曲。寝る前の読み聞かせは、ページをめくる速さが前より落ち着いた。
夫が窓口で止められた日から、手続きは私の手に戻った。私は探りを続けたり、わざと騒ぎを起こしたりはしない。ただ必要な窓口に行き、紙に残し、約束を積んだ。それで十分だった。
さいごに
勝手に進められた離婚話でも、しかるべき対応をすれば窓口で止められます。強い言い返しより、手続きと専門家が効く場面ってありますよね。
ひとりで抱えず、子どもの安心をいちばんに。もし同じ違和感に立ったら、あなたなら、どこにまず相談しますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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