母がデイサービスに通い始めて3週目の夜、母は電話の向こうで泣いていた。
「みんな、仲のいいグループで固まっていて……私だけ、いつも端っこなの」。
その声を聞いたとき、胸の奥がぎゅっと締め付けられた。
「席に入れてもらえない」母の電話
母は73歳。足腰の衰えから、週に2回デイサービスに通い始めたばかりだった。
明るくておしゃべり好きな人だと思っていた。でも「知らない人の輪に入るのは、やっぱり緊張するよ」と、電話でぽつぽつ話してくれた。
施設には、もう何年も通っている常連グループがいるらしい。4人ほどグループで、食事もレクリエーションも、いつも同じメンバーで固まっている。
母が近くの席に座ろうとすると、「そこ、別の方の席だから」と言われたこともあったそうだ。
――学生じゃないんだから。電話の向こうの母に思わず言ってしまいそうになった。
「しっかり母を見て」と言いかけた私に、スタッフが言ったこと
翌日、私はすぐに施設に電話した。
正直なところ、最初は「しっかり母を見て」と言いたい気持ちでいっぱいだった。
でも電話口に出た担当スタッフの言葉が、少し違った。
「お母さんが肩身の狭い思いをされているんですね。私たちの目が届いていなくて、申し訳ありませんでした」。
素直に謝ってくれたあと、こう続けた。
「お母さんの得意なことや、好きなことを一緒に探させてもらえませんか。輪に入るきっかけを、一緒につくりたいんです」。
「しっかり母を見て」という抗議の言葉を飲み込んだ。
——この人は、母のことをちゃんと考えてくれている。そう感じた。
1ヶ月後、母は「先生」と呼ばれていた
スタッフは母に、こっそり得意なことを聞いてくれていたらしい。
母が「折り紙なら、少し自信がある」と答えると、翌週から折り紙コーナーのサポート役を任せてもらえたそうだ。
最初は隣に座った人に折り方を教えるだけだった。
それが気づけば「○○さん、鶴の折り方もう一回教えて」と声をかけられるようになり、1ヶ月後には「折り紙の先生」として、毎週通うのを楽しみにしていた。
「今日ね、新しい花の折り方を教えたら、みんなに拍手してもらったよ」。
電話口の母の声は、あの夜と全然ちがった。
「馴染めない」は、きっかけ次第で変わる
あの夜すぐに施設へクレームの電話を入れなくてよかった、と今は思う。
私が焦って「すぐに対処してください」と迫っていたら、母はきっと「親に心配をかけた人」として、余計に肩身が狭くなっていたかもしれない。
スタッフが「得意なことを探しましょう」と言ってくれていなければ、母はずっと端っこの席で、ただ時間をやり過ごしていただろう。
——新しい環境に馴染むのは、誰だって簡単じゃない。70代の母にとって週2回のデイサービスは、それなりに緊張する場所だったはずだ。私はそこを、少し軽く見ていたんだと思う。
さいごに
「仲間外れにされている」と聞いたら、すぐ動きたくなるのが家族の気持ちですよね。でも焦らずスタッフを信じてみたことで、母に居場所が生まれました。親の「居づらい」には、得意なことを一緒に探す時間が効くこともあるみたい。あなたの身近にも、そんな場面はありませんか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。



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