弟のことは、ずっと「仲のいい兄弟」だと思っていた。だから余計に、あの夜の出来事が頭から離れない。
法事の席で、会話が止まった
祖母の三回忌で久しぶりに実家に集まった日のことだ。
食事が一段落して、親戚のおばさんがぽろりと言った。「でも弟くん、もう落ち着いたんでしょ?大変だったわねえ」。
——大変?何が?
私が首をかしげると、テーブルの空気が一瞬だけ固まった。
母が「あ…」と口を押さえ、弟は視線をそらし、父はお茶を飲むふりをした。
その数秒で、すべてを悟った。
「心配かけたくなかったから」
場が落ち着いてから、後で母に個別に聞いた。
弟が一年ほど前に職場の同僚と不倫関係になり、義妹との間でかなり深刻なことになっていたらしい。今はなんとか修復しているという。
「知ってたの?」と聞くと、母は「うん、お父さんも、お姉ちゃん(長姉)も」と静かに答えた。
「なんで私には……」と続けると、返ってきたのはこの言葉だった。
「あなた、いつも自分のことで精一杯そうだから。心配かけたくなかったの」
怒鳴ろうとは思わなかった。でもその言葉が、思いのほかじわじわと効いた。
私の席だけ、なかった
不倫そのものへの怒りより、「私だけ知らなかった」という事実のほうが、なぜかずっと重く感じた。
家族が共有していた秘密の輪の中に、私の席はなかった——。
「心配かけたくなかった」は確かに優しさから来ているのだと思う。でも同時に、「この人には話さなくていい」という判断でもある。その線引きを、いつの間にか引かれていたのだ。
思い返せば、長姉の出産トラブルのときも、父の検査入院のときも、私への連絡はいつも「落ち着いてから」だった。
——気遣いなのか、それとも私はずっと「輪の外側」として扱われてきたのか。
どちらが正解かは、今もわからない。
責める気持ちより先に、「自分はこの家族の中でどう見られているんだろう」という問いが残った夜だった。
さいごに
家族の「気遣い」と「距離感」は、時に同じ顔をしていることがある。その違和感をなかったことにしないことが、関係を見つめ直す最初の一歩になるかもしれませんね。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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