同窓会の夜、私は黒いシンプルなワンピを着た。派手じゃないのに形がきれいで、姿勢が少しだけ良くなる気がする。会場の扉を開けたときは、普通に久しぶりの顔に会えるのが楽しみだった。
なのに、最初の「似合うね」の後で、体が固まった。
「似合うね」の直後、固まる
声をかけてきたのは、同じクラスだった男性。高校のとき短いあいだ付き合った相手だ。昔と変わらない調子で、肩を軽くたたいてきた。
「似合うね。……でもさ、喪服みたいにも見える。既婚者がそんなに気合い入れて大丈夫?」
笑っている。冗談のつもりなんだろうけど、笑えなかった。私が言葉に詰まると、彼は「昔はもっと地味だったのにさ」と続ける。私はグラスを持ち直して、その場を離れた。
同窓会って、誰かの近況を探ったりする場所だったっけ。席に戻るまでの数歩で、せっかくの楽しい気持ちが無くなるのが分かった。
帰り道「すごく素敵だったよ」
一次会がおひらきになって、女子メンバー数人と駅まで歩いた。部活が一緒だった子が私の横に来て、小声で言った。
「今日のワンピ、すごく素敵だったよ。黒のライン、似合う」
別の子も「写真撮ったら映えてた」と笑う。さっきの言葉が刺さっていた私は、思わず打ち明けた。「喪服みたいって言われて、ちょっとむかついた」と。
「それはないわー。黒って大人っぽくていいじゃん。既婚とか関係ないし」
私は息を吐いて、笑った。さっき一瞬、羽織を引っ張り出して胸元を隠そうとした自分を思い出して、苦笑いした。
鏡の前で「好きで着た」と思う
家に帰って鏡を見た。何度も迷って選んだワンピ。気に入ってるから着た。それだけのことだ。
彼の「既婚者が」という言い方は、私の服装に、結婚や年齢のラベルを貼ろうとするものだった。私がそれを真に受けて、羽織で隠そうとした瞬間、自分の選択が誤っていると認めるところだった。
次の集まりも、好きな服で行こう。場に合っていれば、あとは自分の機嫌を自分で取るだけ。誰かの昔の物差しに、今の私を押し込めなくていい。
帰りの電車でグループの写真を見返した。黒いワンピの私、ちゃんと笑っている。あの人の言葉より、私が選んだドレスで、この表情のほうが、ずっとはっきり残っていた。
さいごに
服に口を出すひと言って、相手のセンスや価値観が透けますよね。場に合っていれば、誰が何を着るかはその人の自由。もし心ない言葉に出会ったら、自分の「好き」をそっと握り直すだけでいいのかも。あなたなら、何と言われたときに流しますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


コメント