夕方のスーパー帰り、荷物を積んでコインパーキングの精算機へ向かった。雨上がりで路面はぬれていて、早く出ようと足を速めた。
背後で金属をこする嫌な音がした。振り向くと、私の車の助手席側のドアの縁に、見慣れない白い線が伸びている。
「元からの傷でしょ?」の一言
隣に停めたシャツ姿の男性が、こちらを見ずにドアを閉めた。
「今の、当たりましたよね?」
声をかけると、彼は肩をすくめて言った。
「え、元からの傷でしょ?」
車検のときにもらった写真が頭に浮かぶ。あの位置の傷はなかったはず。
「確認したいので、連絡先を教えてください」
「必要なくない?たいしたことないでしょ」
彼はエンジンをかけようとした。逃げられると困ると感じた。ナンバーと車種をスマホで撮り、私は運転席の前に立つのではなく、車の横で見える位置を確保した。
「連絡先?いらないでしょ」
「待ってください。管理会社に連絡します」
駐車場の看板に管理会社の番号が出ている。電話でかけ、「隣の車のドアが当たって傷がついた」と伝えると、オペレーターは落ち着いた声で答えた。
「現場に巡回の者を向かわせます。お車の前でお待ちください」
男性はため息をつき、ハンドルに両手を置いたまま視線を外した。
「大げさだよ」
「触れていないなら、映像を見れば分かりますよね」
舌打ちが返ってきた。
数分で管理会社の担当者と警備スタッフが到着。名札を見せ、「状況を教えてください」と聞かれる。私は当たった位置と音のタイミングを説明し、男性にも説明を求めてもらった。
「いや、俺は当ててないです。最初からあったんだと思います」
担当者はうなずき、駐車場奥の管理室へ案内した。「防犯カメラで確認しましょう」
「管理室で映像、お願いします」
モニターの前に三人で立つ。担当者が時刻を合わせ再生した。私の車の横に男性の車が入ってくる。男性がドアを開けた瞬間、ドアの角が私の車のドアにコツンと当たり、車体がわずかに揺れた。
「ここです。17時23分、接触が見えます」
担当者が一時停止して、当たった部分を指で示す。別角度のカメラでも同じ瞬間が映っていた。
男性は腕を組み、画面を細めて見つめた。口が動くが声が出ない。
「さっき、『当たってない』って言いましたよね?」
私は彼のほうを見る。担当者が口を開いた。
「物損の可能性があります。双方の連絡先を交換し、この後は保険や警察と相談してください」
私はメモ帳を出し、連絡先を記入。相手の名刺と保険会社名も受け取り、傷と位置を写真で記録した。
念のため、私は車検時にもらった写真データをスマホで開き、担当者に見せた。日付入りで、同じドアに傷がないのが分かる。担当者は写真の存在も記録に書き添えた。
「ちょ、待って」と言いよどむ
外に戻ると、男性が小声で言った。
「風が強かったし、ほんとにちょっとで…」
「映像が残っています。保険会社さんと話してください」
担当者も続ける。
「接触があった場合は記録します。映像は一定期間保存します」
男性は視線を落とし、「分かりました」とだけ言い、ポケットからスマホを出して保険会社に電話をかけた。
この流れで、私は110番通報もし、現場で事情を説明して物損の届け出をした。管理会社の担当者が立ち会い、警察官が状況を確認。事故の位置関係や傷を撮影し、双方の連絡先を控えてその場は解散となった。
その後
翌週、相手の保険会社から連絡が来た。修理工場への搬入日と代車の段取りがすぐに決まり、見積額は保険でカバーされると伝えられた。
男性本人からは短い電話があり、「最初からの傷かと思って…すみません」と言われた。
「今後は、ドアを開ける前に周りを見てください」
そう伝えると、「はい」と返ってきたので、それ以上は言わなかった。
修理が終わった車を受け取ると、白い線は消え、いつもの景色に戻った。あのとき、看板の番号に電話し、管理室で映像を確かめ、必要な先へつないだ。手順を踏んだことで、話が前に進んだのだと思う。
さいごに
相手の「当たってない」に飲まれそうなときほど、現場を扱う人に繋げるのが近道でした。感情だけでは決まりません。
駐車場の番号や手順を一度見ておくと、万が一のときに助かりますよね。
あなたなら、こんな場面でどう動きますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。



コメント