義姉とはずっと、なんとなく「距離のある関係」だった。
あからさまに無視されるわけではないけれど、義実家での集まりのたびに、私だけ空気のように扱われる感覚があった。
「家族に認めてもらいに来た」と義姉が切り出した
その日の集まりは、義母から「少し大事な話がある」と呼ばれたものだった。
夫と二人でリビングに入ると、義姉が見慣れない男性と並んで座っていた。
「彼、紹介するね。真剣にお付き合いしてる人で、家族に認めてもらいたくて」
義姉は40代で、離婚歴がある。
男性も同じくらいの年齢で、落ち着いた雰囲気の会社員といった風貌だった。
——でも何かが、引っかかった。
男性の左手の薬指に、うっすらと日焼け跡の白い線が残っていたのだ。
最近まで指輪をはめていた痕。嫌な予感がよぎったが、私はそれを見て、静かに目を伏せた。
「義弟の嫁なんて飾りでしょ♡」
歓迎ムードが広がる中、義姉はどんどん存在感を大きくしていった。
義母に料理のリクエストをしたり、「彼、〇〇建設で課長しててね〜」と彼の仕事の話を誇らしげに語ったり。
そして私に視線を向けながら、こともなげに言った。
「義弟の嫁ってさ、こういう場では飾りみたいなもんでしょ♡ 無理に喋らなくていいよ」
ふわっと笑顔を添えた一言だったが、刃のような棘があった。
夫は苦笑いで場を流した。義母も聞こえていないふりをした。
——私は、黙って微笑んだ。
ただ、この日はたまたまバッグの中に、仕事用の名刺が入っていた。
午前中に別の用事があり、そのまま来たのだ。
「あなた……もしかして、あの財団の理事の方ですか」
話が一段落したところで、男性が私に向かって「お仕事は何をされているんですか?」と話しかけてきた。
社交辞令のような軽い質問だった。
「ご丁寧にありがとうございます」と言いながら、私はバッグから名刺を取り出してテーブルに置いた。
その瞬間、男性の顔色がすっと変わった。
名刺には私の名前と、私が理事を務める公益財団法人の名称が入っている。
義姉が誇らしげに語っていた彼の勤め先は、まさに私の財団が長年助成金を交付している企業だった。
「……あなた、もしかして、あの財団のの〇〇さんですか」
声が、わずかに震えていた。
私はただ「ええ、そうです」とだけ答えた。
「えっ、なんでそっちの話に…?」義姉の顔から笑顔が消えた
男性は明らかに動揺していた。
私の財団は、男性の会社が毎年申請している助成金の審査に関与している。
つまり彼にとって、私は「無視してよい飾り」どころか、仕事上でも絶対に無視できない立場の人間だったのだ。
男性は急に姿勢を正し、「大変失礼しました、お名前はかねがね伺っておりましたのに、気づかず申し訳ありません」とぎこちなく頭を下げた。
義姉はその様子を見て、意味が飲み込めずにいた。
でも次第に、「あれ……この人、私より嫁の方を気にしてる?」と気づいたのか、顔が引きつっていった。
「ちょっと、なんで急にそっちの話になってるの……?」
義姉の「家族に認めてもらう」計画は、完全に脇に追いやられていた。
私はその後、男性とは財団の活動について穏やかに言葉を交わした。義姉はその間、一言も口を挟めなかった。
後日、夫づてに聞いた話では、男性には現在も婚姻関係が続いている妻がいたらしい。あの薬指の日焼け跡は、集まりの直前に慌てて外した指輪の痕だったのだ。
義母がそれを知り、義姉にきつく話をしたという。
「家族に認めてもらう」どころか、義姉は義実家でしばらく居心地の悪い立場に置かれることになった。
それ以来、義姉は私に「飾り」と言わなくなった
義実家での集まりで、義姉が私に向かって上から物を言うことは、あの日を境にぴたりとなくなった。
あからさまに仲良くなったわけではない。
ただ、「この人をぞんざいに扱っていい」という空気が、消えた。
私は何も仕掛けたわけじゃない。
名刺を出したのも、ただ丁寧に自己紹介しただけのこと。
さいごに
「飾り」と言われた側には、その一言がずっと残るものですよね。
静かに名刺を置いただけで場が一変したこの話、胸がすくような、でもどこかせつない気持ちになりませんか?
あなたの義実家にも、似たような空気、ありませんか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。



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