週末の午後、駅近くのカフェへベビーカーを押して向かった。電話で「ベビーカー横付けできる席と、隣の荷物置きワゴンもお願いします」と伝え、名前も告げてある。
混み合う店内。入り口で店員に予約番号を伝え、席の場所を教えてもらった。入口から見えるその一角に、買い物袋が山のように積まれていて、ベビーカーの通路がふさがっていた。
「常連だから置いといた」
近づくと、見知らぬグループがテーブルを囲み、隣のワゴンと通路に袋を重ねていた。私は予約時に聞いていた番号を伝えた。
「この席、予約しています。荷物置きも一緒にお願いしてあって」
グループの一人が笑って肩をすくめる。
「ここ、うちらいつも来てるから。とりあえず置いといたの」
私は娘の顔を見て、通路が通れないことを伝えた。
「ベビーカー、通せないんです」
「ちょっとでしょ? 今、買い物帰りでさ。後でどかすから」
テーブルの上には取り分け皿。まだ誰かを待っている様子だった。
「後から来るから取っといて」
さらに袋が増え、「あと二人来るから、その分キープね」と、席の背にコートを掛け、荷物置きを完全に塞がれた。私は通路の端で立ち止まり、店員さんを呼ぶか迷う。娘は目をこすり、眠たそうだ。
「すみません、予約の札、ここにあります?」
私は壁の札を探したが、荷物に押されて見えない。グループの女性が早口で続ける。
「常連はわかってるの。店もいつも許してくれてるし」
その言い方に、ムッとした。予約の控えはスマホにある。まずは通れるようにしたい。
「じゃあベビーカーは?」
そこへ、レジへ向かっていたスーツ姿の男性が足を止め、私と荷物の山を見比べてグループの方を向いた。
「じゃあベビーカーは? 動けないよ」
近くのテーブルの人たちも顔を上げる。私はその一言に背中を押され、レジに向かって手を上げた。
「すみません、この席座りたいんですけど…ベビーカーの席と荷物置き、使えなくて」
店員さんが「店長を呼びます」と奥へ走る。グループの一人は腕を組み、視線だけこちらに寄越した。
「予約札と台帳、こちらです」
すぐに店長が来た。エプロンのポケットから小さな札を取り出し、荷物の隙間に差し込む。
「こちらのお客さま、ベビーカー席とお隣の荷物ワゴンで承っています。予約台帳も確認しました」
店長は予約台帳の該当箇所を開いて見せ、私の名前と時刻を指さした。
グループの女性が食い気味に言う。
「でも私たち、いつもここなんで。後から来るし」
店長は首を振り、通路のラインを指でなぞった。
「いつもご利用いただいているのは承知しています。ただ、予約と通路確保は全員同じルールです。荷物は予備ワゴンと足元の範囲でお願いします。お席は空いているこちらにご案内します」
女性の手が止まり、袋の持ち手を握り直す。
「じゃ、じゃあこの袋どこ置けば」
通りがかった男性が手のひらでワゴンを示し、短く返した。
「そこ、今はこの人の予約だよ」
店長がキャスター付きの予備ワゴンを押してくる。スタッフ二人も加わり、袋は次々と移動。背もたれに掛けたコートも外してもらった。
私はベビーカーを通し、予約されていた席に横付けする。娘は小さくあくびをして、そのまま目を閉じた。
「助かった」と言えた日
グループは少し離れたテーブルに座り直し、水を飲みながら小声で相談している。店長は私のテーブルに水と取り皿を置き、深く会釈した。
「ご不便をおかけしました。ベビーカー通路は、荷物でふさがないように全体で気をつけます」
「ありがとうございます」
私はお礼を伝え、さっきの男性にも会釈した。男性は会計を済ませるところで軽く手を振り、「よかったですね」と言って店を出た。
ホットサンドが運ばれてくる。ストローをさして、やっとひと息。ワゴンには予約札がしっかり立っている。
会計時、店長が言った。「今後は札を大きくして、入口にも通路確保の掲示を出します。入店時はスタッフが誘導しますね」
私はうなずき、「混む時間帯は、入店してすぐ声をかけます」と伝えた。
その後
それからそのカフェでは、ベビーカー席の近くに大きめの札が置かれるようになり、入口にも「通路の確保にご協力ください」の掲示がついた。混み合う日でも、スタッフが最初にワゴンをセットしてくれる。
あの日のグループも、別のテーブルで荷物を足元にまとめていた。店長の「常連さんも同じルールです」という一言で、みんなが置き場所に気を配るようになったのだと思う。
私は娘とときどき通い、「今日は寝ちゃってますね」と雑談できるくらいの顔なじみになった。
さいごに
予約やルールは、みんなが安心して使うための土台ですね。店長の確認と、通りすがりの一言が効きました。
買い物袋やベビーカー、つい「少しだけ」と置きがち。困ったら早めにお店の人へ。あなたなら、どう伝えますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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