引っ越してきた当初は「よろしくお願いしますね」と笑顔で迎えてくれた人たちがいた。それがいつのまにか、廊下ですれ違っても目が合わない。
「おはよう」が空気に溶けていく
気づいたのは、ある朝のエレベーターの中だった。
いつもの顔ぶれの50代くらいの女性が3人。私が「おはようございます」と声をかけると、会話がふっと止まって、誰も振り返らない。ボタンのあたりに視線が集まって、また話が再開される。
——聞こえてなかったのかな。
最初はそう思っていた。
でも、それが続くようになった。掲示板の前でおしゃべりしているグループの横を通るとき、私が通り過ぎた瞬間だけ声のトーンが落ちる気がする。気のせいかもしれない。でも、気のせいとはいえないような気もする。
「うちには来てなかった?」回覧板が飛ばされてた
決定的だと思ったのは、回覧板のことだ。
隣の家の人から「うちに来てたけど、先に回ってきた?」と聞かれて初めて知った。確認すると、ここ2〜3回、私の家には来ていなかった。
意図的かどうかはわからない。でも、偶然にしては続きすぎている。
悔しかった。腹も立った。「何かした?」と聞きたいような、でも角を立てたくないような、ぐるぐるした気持ちが夜まで続いた。
「仲間外れにしたことなんてない」——本当に?
誰かに話したくなって、昔からの友人にLINEを送った。話しながら、ふと数年前のことを思い出した。
前の住まいに新しい住人が来たとき、私はどうしていたっけ。
最初は挨拶した。でもその人がちょっと変わった時間帯にゴミを出すことがあって、なんとなく距離を置くようになった。グループLINEに誘うのを「まあいいか」とスルーしたこともあった。悪意はなかった。ただ、積極的に関わろうとしなかっただけ。
——でも、その人からしたら?
「仲間外れにされた」と感じていたかもしれない。今の私がそうされて傷ついているように、あの人も傷ついていたかもしれない。
そう気づいたら、怒りがすっと引いて、なんとも言えない気持ちだけが残った。
「無視した覚えはない」「仲間外れにしたつもりはない」——その言葉、今の私を困らせている人たちも、きっと心の中で同じことを思っているんだろう。そう考えると、責めようとする気持ちがなくなった。
傷ついた夜に出てきたのが、自分への反省だったのは、正直しんどかった。でもたぶん、これは忘れちゃいけないことだと思う。
さいごに
「そんなつもりじゃなかった」という言葉は、傷ついた側にはなかなか届かない。でも今回のように、傷ついた経験が過去の自分を照らし返すこともある。挨拶を返してもらえなかった夜の気持ち、あなたにも覚えがありませんか。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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