プレゼン当日の朝、私は会議室で最後のスライドをめくっていた。
同期はまだ来ない。今日だけは、ちゃんと来てほしいと心の中で念じる。
会議前「また寝坊?」がよぎる
開始10分前。座っているのは私と部長、そして先方の担当者だけ。
同期の既読はつかない。以前も「タクシーで向かってます!」と直前に駆け込んできたことがあり、嫌な予感が頭をかすめた。
彼は「大丈夫っす、任せてください」が口癖。でも段取りの細部は私が詰め直すのが通常だった。今回は外部の役員も入る回。念のため、前夜に部長へ進行の台本を共有し、紙の配布資料も余分に刷ってカバンに入れておいた。
「今起きたw」誤送信
会議室のスピーカーが短く鳴った。プロジェクトの共通チャットに新着。
「今起きたw先に始めといてw」
部長も先方担当者も、同時にモニターをのぞき込んだ。そこは社内だけでなく、先方の担当者も入っているグループだ。
私の手が止まる。
「……誤送信、ですね」先方の担当者が小さく言った。
部長は姿勢を正し、口を開いた。
部長「進行は君がやる」
「まずはお詫びします。本来あってはならない対応です」
部長は先方に頭を下げ、チャットにも「不適切な発言があり申し訳ございません。本件は私が責任を持って進行します」と投稿した。
それから私にだけ聞こえる声量で一言。
「ここからは君がやる。台本どおりでいい」
準備しておいてよかった。私は息を整え、冒頭のスライドを一枚進める。
「本日はお時間をいただきありがとうございます。まず現状の数値から共有します」
要点だけを拾い、手順どおり説明を続ける。部長が要所で補足する。ふだん通りの声が出た。
その最中、チャットに「5分で着くから!」と同期の追いメッセージ。部長は既読をつけただけで返信しない。
「入室は不要です」の一言
開始から20分ほど。会議室のドアが控えめにノックされた。
部長は立ち上がり、ドアの方を向いてはっきり言う。
「入室は不要です。あとで人事に行ってください」
ガラス越しに立っている同期が見えた。顔をこちらに向けたまま固まっている。手元のスマホを持ち直し、引き返した。
私はスライドを進め、質疑応答に入る。先方からは「混乱の中でも論点が整理されていますね。体制の見直しに前向きなことが伝わりました」と言葉をもらった。部長は改めて頭を下げ、「本件は社内で厳正に対応します」と締めた。
社内通達と担当の再編
会議は予定どおりに終了。午後、社内チャットに通達が出た。
担当の再編。対外窓口と進行責任者は私。同期は本件から外れ、始末書の提出と評価の見直し、一定期間の業務制限。文面は簡潔だったが、内容は重い。
その日の夕方、部長に呼ばれた。
「台本、助かった。次の定例から君でいこう。資料の締切も、君のやり方で決めていい」
私は頷き、実務の段取りを並べた。
「共有は前日に完了、社外配布は48時間前に確定、チェックポイントは週2回で回します」
「それでいこう」
その後「私が担当します」
担当変更後の最初の定例で、私は冒頭に伝えた。
「今後の進行は私が担います。遅延を出さない運用に切り替えました。必要な情報は前日に共有します」
以降、確認の粒度をそろえ、依頼事項は締切と宛先を明記。資料は48時間前に凍結し、差し替えは理由と承認が必要な運用にした。部長は「やりやすい」と一言。先方からの質問も増え、打ち合わせが具体的になった。
案件は予定より一週間前倒しで完了。先方の担当者から「次もお願いします」と連絡が来た。
あの朝の一文で、担当も評価も動いた。部長の一言で会議は前に進んだ。背筋が伸びる思いだった。
数日後、同期から個別メッセージが届いた。
「迷惑かけました。自分が甘かったです」
私は短く返す。
「体制は変わったけど、必要な引き継ぎはお願いします」
余計な感情は挟まない。いまやるべきことだけ、やる。
さいごに
一つのメッセージで仕事の信頼は揺らぎますが、その場で誰かが舵を取り直せば立て直せます。朝のヒヤリ、心当たりがある人も多いはず。もし全体チャットで同じ誤送信が起きたら、あなたなら最初の一手をどう切りますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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