外壁の塗り替えを考えはじめたのは、梅雨前のことだった。いくつかの業者に声をかけて、じっくり比べようと思っていた。まさかその最初の一社に、こんなにも長く引っかかることになるとは思っていなかった。
「この地区はウチのエリアなんです」笑顔でそう言われた
最初に来た担当者は、40代くらいの男性で、感じのいい人だった。
地元で長くやっているらしく、近所の施工事例をいくつも写真で見せてくれた。「あそこも、あちらも、うちがやりました」と言いながら。
ひと通り説明が終わったあと、私が「他社さんにも声をかけて比較したいと思っています」と伝えると、担当者はにこっと笑って言った。
「そうですか。ただ、この地区はうちを通すのが慣習になってまして。他社に頼むと、後々なにかと面倒になることもあるんですよね」
——え?
聞き返す前に、担当者は「まあ、ご検討ください」と名刺を置いて帰っていった。
「面倒」って、どういう意味?
あの言葉が、ずっと頭のすみに残っている。
「面倒」というのが具体的に何を指すのか、聞けなかった。
近所づきあいのこと? 工事のあとのなにか? それとも単なる営業トークで、深い意味はなかった?
考えれば考えるほど、わからなくなる。
脅しと受け取るには、あまりにも穏やかな口調だった。でも、あの笑顔の裏にあったものが気になって仕方ない。
結局、私は他の2社にも見積もりを取り、価格と内容を比べて別の業者にお願いした。仕上がりには満足している。
その後、最初の業者から「ご縁がなかったようで、残念です」という電話が一本かかってきた。それだけで、それ以上はなにもなかった。でも受話器を持つ手が、少しだけ固まった。
あの一言が腑に落ちないまま
今思えば、私は怖かったわけじゃない。
ただ、あの言葉の意図が読めなくて、どう反応すればいいかわからなかった。
「それはどういう意味ですか?」と問い返せばよかったのかもしれない。でもあの場の空気で、そんなことを聞けるほど私は図太くなかった。
「検討します」と言って見送って、あとからじわじわとモヤモヤが沸いてきた。
——あれはなんだったんだろう。
地元での実績を盾にして、選択肢を狭めようとするような言い方。意図的だったとしたら、ちょっと怖い。意図的じゃなかったとしたら、それはそれで無神経だと思う。
どちらにしても、気持ちよく「ありがとうございました」と送り出せなかった。そのモヤモヤだけが、まだ心の中でに残っている。
さいごに
「後々面倒になりますよ」——笑顔でさらっと言われると、怒ることも流すこともできなくてじわじわと尾を引くものです。悪意かどうかもわからない分、余計に消化しづらい。こんなモヤッとした経験、あなたにもありませんか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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