在宅ワークが続くと、気づけば誰とも言葉を交わさないまま一日が終わります。
私は普段、自宅で資料作成をしているのですが、午後までに区切りをつけたくなり、近所のカフェへ向かいました。窓際の二人席でラテを頼み、ノートPCを開くと、家とは違う空気のおかげで集中が戻ってきました。
コーヒーが冷める前の小休憩
ラテが半分ほどになった頃、トイレに行きたくなりました。
その店は「離席札」が置いていないタイプでしたが、短時間なら荷物を残して席を確保している人も多い印象でした。
私は念のためノートPC本体と財布、スマホは持って立ちました。
席には、目印になるよう文庫本とストールだけを椅子にかけ、カップはそのままにして離れました。
ところがトイレは、並んでいて思ったより時間を取られてしまいました。
荷物の前で言われた「座ってなかったですよね?」
急いで席に戻ると、私の椅子に見知らぬ女性が座っていました。
テーブルのカップはそのままなのに、椅子にかけていたストールは背もたれから外され、文庫本もテーブルの端に寄せられていました。
一瞬、状況が飲み込めず立ち止まりましたが、深呼吸して声をかけました。
「すみません、こちら使っています。荷物も置いています」
女性は周囲を見回しながら、空席がなくて焦っている様子もありました。それでも私の目を見ず、平然とした顔で言いました。
「座ってなかったですよね?」
その言い方があまりに当然で、私のほうがルール違反をしているみたいに感じました。
手には持ち歩いていたPCバッグがあり、立ったまま話す距離が余計に心細くなりました。
隣の席の人が見ていたもの
私が「トイレに行っていただけで、すぐ戻るつもりでした」と伝えても、女性は席を立つ気配を見せませんでした。
「空いてると思ったので」と言い方を変え、文庫本を指先で押しながら動かない姿勢でした。
そのとき、隣の一人席で作業していた男性がこちらを見ました。
私が席を立つ直前、イヤホンを探しながらオンライン会議の予定を確認していたのを、たまたま目にしていたようでした。
男性は私に向かって静かに言いました。
「さっきまでこの方がここに座っていましたよ。荷物も置いて、すぐ戻る感じでした」
続けて男性は店員さんに手を挙げ、「席の間違いがあったみたいです」と短く状況を伝えてくれました。
私は店員さんに、トイレに行っていたことと、席にストールと本を残していたことを説明しました。
店員さんはテーブルのカップと寄せられた文庫本を確認し、落ち着いた声で女性に言いました。
「こちらは先にご利用中の席のようです。別のお席をお探ししますね」
男性の一言が添えられたことで、話が「私の主張」ではなく、その場の事実として扱われたのが分かりました。
事実だけが残って、手が軽くなりました
女性は一度だけ口を開きかけましたが、店員さんと男性の視線を受け、渋々カップを持って立ち上がりました。
最後まで謝罪はありませんでしたが、椅子の脚が床を擦る音で、場面がきっぱり切り替わった気がしました。
私はストールをかけ直し、文庫本を元の位置に戻して座りました。隣の男性に小さく頭を下げると、男性は「いえ」とだけ返して画面に視線を戻しました。
この日以来、席を外すときは貴重品は必ず持ち、札がある店では活用し、ない店では混んでいる時間帯ほど店員さんに一声かけるようにしています。
見ていた人が事実を添えてくれたおかげで、気持ちがすっと軽くなりました。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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