交際1年の彼を、日曜の昼に実家へ連れて行った。母は煮物を用意して玄関まで迎えに来る。私も力を抜くつもりでいたのに、自己紹介の流れで苗字の話が出たとき、嫌な予感がした。
「その苗字、どこかで…」
食卓で、母が彼に「お仕事はどんな感じ?」と聞いた。彼が会社の業種を話し、苗字の話になったとき、母の湯呑みを持つ手が止まった。
「その苗字、どこかで…」
母が私を見る。私は首をかしげた。彼は「よくある苗字で」と笑いかけて、少し言いよどむ。
「お母さんの名前は?」と母。彼が母親の下の名前を出した瞬間、母が小さく「あ」と漏らした。
「昔、同じ部署にいた方かもしれない。私が時短に切り替えた頃、土日の担当でいろいろあって…」
母はテーブルの箸置きを指でそろえ直した。私は「そうなんだ」と相づちを打つのが精一杯。彼は姿勢を正し、「母からも、職場の人間関係で大変だったって聞いてます」と落ち着いて答えた。
母は家庭の話に踏み込みすぎないよう、料理の説明に戻した。彼も合わせて感想を言ってくれたけれど、さっきまでの明るい感じではない。私は、次に何を言うか考え続けた。
「今日はこの話、ここまで」
帰り道、駅までの歩道で彼が「驚かせてごめん」と言った。私も「私こそ」と返して、歩幅を合わせる。
「私たちのことは、私たちで決めたい。親同士のことは一旦置いとこう。今日はこの話、ここまでにしない?」
口に出すと、彼はすぐ「うん。うちの親にも、特に話さないでおくよ」と言ってくれた。
帰宅後、母へメッセージを送った。「今日のこと、急に思い出させてごめんね。私たちは変わらず仲良くしていくから、また落ち着いたらごはん行こう」と。
過去は変えられないし、簡単に白黒もつけられない。だから、これからの決め事は私たちで決める。親同士は当面同席させない。まずは二人の予定を優先する。メモに書いたら、次の週末の段取りが見えた。
帰りに小さな喫茶店に寄って、プリンを半分こ。アイスコーヒーを飲みながら、今日の妙な緊張について笑えるまでには、まだ少し時間がいる。それでも、並んで座って同じペースでカップを置く自分たちに気づいて、やっていける気がした。
さいごに
親の過去のつながりが、思わぬ気まずさを連れてくること、ありますよね。無理に混ぜず、当人同士を先に整えるのも一つのやり方。距離の決め方は人それぞれ。あなたなら、まずどこから整えますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。



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