「お代わり自由だろ?」大皿3枚を残した団体。翌朝、宴会場の扉に貼られた一枚

       
体験談
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「お代わり自由だろ?」大皿3枚を残した団体。翌朝、宴会場の扉に貼られた一枚 体験談

土曜の夕方、配膳台に並んだ大皿を見ながら、私は小さく息を吐いた。にぎやかな宴会は慣れている。でも、年に数回来るあの団体だけは、胸に妙な違和感が残る。

去年も、大皿が手つかずで何枚も戻ってきた。片付けながら、同僚と目が合った。「また、か」。幹事さんの口癖が耳に残っている。「おかわり自由、だろ?」

「おかわり自由だろ?」の圧

開始早々、幹事の男性が手を上げた。五十代くらい、声がよく通る。

「唐揚げの大皿、三つね。あと刺身ももう一舟。おかわり自由って書いてあるだろ?」

献立の端を指さすので、私はメニューを開いた。小さく「ご飯・汁物はおかわり自由」とある。大皿や舟盛りの追加は、メニュー価格で承るのがうちの決まりだ。

「こちらはご飯とお味噌汁のことなんです。お料理の追加は有料です」と言いかけたところで、幹事は笑って手を振った。

「いいから、去年もそうだったし。ね、早めに出して」

断り切れず、まずは一皿ずつの提供にとどめた。席を回ると、若い人たちは箸をつけず、グラスばかり。私は「食べ切れる分で様子を見ませんか」と声をかけたが、幹事は肩をすくめた。

「余ったら若い子に回して。従業員さんが食べてもいいし」

「お客さまにお出ししたものは、別の席や従業員には回せない決まりなんです」

幹事は眉を上げただけで、席に戻った。

「残ったら若い子に」で押す客

乾杯のあと、幹事は周囲に見せつけるように追加注文をしてきた。「唐揚げもう一丁」「鍋、具材だけ足して」。

料理長はアイコンタクトで了承してくれたが、私は厨房で伝票の控えに「追加・大皿」印を押し、時刻を書いた。昨年から、支配人と「大量に残る追加注文は控えたい」と話していて、調理と配膳、戻りの状態を残す運用を始めている。

閉宴後、台車に手つかずの大皿が三枚、半分残しが二枚。業務端末で日付入りの写真を撮り、伝票控えと一緒に支配人へ送った。

「今回も、ですね」

支配人は画面を見て、短くうなずいた。「明朝、入口に案内を出そう。『おかわり自由はご飯と汁物のみ』『コース外の大皿は有料』。昨年の残食の合計枚数も掲示する。団体名は出さない。幹事さんには個別に説明する」

私はうなずき、片付けに戻った。夜は、これ以上揉めないように進めた。出してしまったものは、もう戻せない。

「では昨夜の分は計上で」案内

翌朝、宴会場の扉の内側に、A4の紙が一枚貼られた。

『ご宴会のお客さまへ
・おかわり自由の対象はご飯・汁物です
・コース外の大皿の追加はメニュー価格でのご提供です
・昨年の大皿追加と残食の記録(合計枚数のみ掲示)』

団体名は出していないが、関係者には伝わる書き方だ。受付台には、昨夜の伝票控えと写真をまとめたファイル。支配人と私で並んだ。

昨夜の支払のため、幹事が来た。紙を一読して、こちらを見る。

支配人が口を開いた。「おはようございます。昨夜の追加分、唐揚げ二、大皿の刺身一。こちら、厨房の出庫と配膳の記録です。写真は宴会後、片付け前の状態で撮影しています」

私はファイルを差し出した。時刻と席番号、大皿の数がはっきり写っている。幹事はページをめくり、口を結んだ。

「お代わり自由と—」と言いかけた幹事に、私はメニューを開いて示した。

「対象はご飯と汁物のみです。こちらが該当部分です。昨夜はお伝えし切れず、結果として大量に残ってしまいました。以後は追加の前に量のご相談をお願いしたいです。なお、昨夜の三皿はコース外ですので、メニュー通りのご請求になります」

幹事が止まり「分かりました」

幹事はページに指を置いたまま、めくるのをやめた。後ろの参加者が「そんなに頼んでたの?」「残ってたよな」と小声で交わす。

「わかりました。昨日の分は俺が払います」

幹事は財布を取り出し、会計を済ませた。「昨日は、悪かったね」と一言だけ私に向けた。

支配人はうなずき、「次回のご予約のとき、人数に対してどのくらいお召し上がりになるか、目安をお知らせください。こちらでも調整します」と添えた。

「次は様子見でいきます」

その団体は、翌月も来た。電話の声は同じ幹事だが、口ぶりが変わっていた。

「唐揚げは一皿で様子見、刺身は少なめで。足りなかったらその場で追加します」

当日は、最初の配膳で「この量で十分」と言われ、最後にご飯と味噌汁だけを数人分おかわり。残る皿は一枚もなかった。

こちらからも「足りそうですか」「次の一皿、どうされますか」と聞きやすくなった。入口の案内紙は常設にし、初めての団体にも必ず目に入る場所に貼る。料理長は「無駄が減った分、刺身は切り立ての厚みを増やそう」と笑った。

夕方の配膳台。整然と並んだ大皿を見て、私は前髪を手の甲で押さえた。以前のようなザワつきは、もう残っていなかった。

さいごに

“お代わり自由”の一言をねじ曲げられると、現場は困ります。決まりを見える形にして、記録で伝えると、言った言わないを減らせますよね。あの紙一枚が、無駄と気まずさを減らしました。あなたなら、どんな伝え方を選びますか?

※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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