玄関の前で、私は上着の袖を直した。義家族との集まりで使う個室、7名の季節コースは私の名前で予約してある。店からは事前に「代表者様は必ずご同席ください、個室とコースのご案内は代表者様同席が条件です」とメールが来ていて、私は何度も読み返して覚えてきた。
なのに、店の前で義妹が私を追い越し、受付の前に立った。
店前で義妹「6人で、嫁は別で」
「7名様でお待ちしてました」と店員さんが言う。
「6人です。このひと(嫁)は別で」と義妹が答えた。語尾にハートでも付きそうな声だった。
横で夫が苦笑いして、私の目を見ない。「まあまあ、家族だけで座ろうって」と小声で言う。
義妹がここまで仕切れるのは、義母から「今日の店との調整はあなたに任せた」と言われていたからだと、あとで知る。任されたのをいいことに、義妹は私を外す段取りまで自分で決めていた。
私を置いていく話が、当たり前のように進んでいく。頭の中で「え、私だけ入れないってこと?」と何度も繰り返した。声を荒げても仕方ない。
「家族だけで座ろ」の圧
義妹は勝手に名簿を読み上げる。「父、母、兄、私と彼、そしてあんたの夫。6人」
私に向けては「同じ建物だし、ロビーで待ってたら? 写真はあとで送るから」
それ、何の罰ゲーム? と喉まで出かかったけど、飲み込んだ。夫は私の顔を見ずにスマホをいじっていた。
店員さんが困った顔で私を見る。「ご予約は7名様の個室コースでして、代表者様のご同伴が条件のプランなんです」
その言葉で、義妹が私抜きで通そうとしていることと、店の条件が真っ向からぶつかっているのが分かった。
私は予約者。条件を確認
私は予約メールを開いて見せた。「代表者本人の同席、人数厳守、当日の人数変更はコース適用外。ここまで店から届いていました」
店員さんがうなずく。「はい、代表者様が同席されない場合、個室とコースは無効になります。仕込み済みのお料理は当日キャンセル扱いで、差額のご請求が出ます」
義妹が眉をひそめる。「は? それ、誰が払うの?」
私はスマホを開いた。義妹にも既読がついているグループLINEに、予約のスクリーンショットと条件、時間を送ってあった。「これ、みんなに送ってたよね。条件、知らなかったとは言わせないよ」
私「では帰ります」と言う
私は息を吸って、店員さんに言った。「私は本日のコースを利用しません。代表者の私が同席しないので、プランは取り消してください」
義妹が素早く割り込む。「ちょっと待ってよ。別にいいじゃん、嫁はロビーで」
私は夫を見た。「あなたは止めないの?」
夫は目をそらしたまま、「今日は……家族の写真とかあるし」と言う。
もう聞くだけ無駄だと思った。「では帰ります。失礼しました」
私は踵を返した。店員さんが呼び止めるかもと思ったけど、違った。店員さんは義妹たちのほうに向き直った。
個室取消、支払いは誰が?
「代表者様がご不在ですので、個室とコースは適用外になります。ご入店は6名様の一般席でのご案内になります。仕込み済みのコース分は当日キャンセル料が発生しますので、本日ご来店の皆さまの会計にまとめさせていただきますね」
義妹の顔がこわばった。「ちょ、ちょっと。そんなの聞いてない」
店員さんは表情を変えずに、はっきりした声で続けた。「事前にお送りした条件に書いてあります。こちらでも確認済みです」
夫がやっと私に電話をかけてきた。「今、どうすんの? 戻ってこれない?」
私は短く答えた。「条件は伝えてたよ。今日は帰るね」
電話の向こうで、義母らしき声が焦っていた。「代表者を外すなんて聞いてない、どうするのあなた」と義妹を責めている声も漏れ聞こえた。私は通話を切り、駅へ向かった。
その夜、夫からメッセージが来た。「結局、個室はなし。一般席でアラカルトになった。キャンセル料もかかった。雰囲気、最悪だった。帰りに母さんが妹を怒ってた」
私は既読だけつけた。
後日、夫の正式な謝罪
数日後、夫が頭を下げた。「あの時、止められなくてごめん。妹に『少しくらいいいでしょ』って押し切られた。キャンセル料と当日の会計、俺がまとめて払ったから。妹に立て替え分は返させる」
私は条件を口にした。「今後、私の名義で予約する集まりで、私を外す前提で話を進めないでほしい。私抜きでやるなら、段取りも会計も全部そっちでやって。私は関わらない」
夫はうなずいた。「わかった。妹にも母にも言っておく。もう勝手なことはさせない」
夕方、義妹からも短いメッセージが届いた。「この前は悪かったです。立て替えてもらった分、お兄ちゃんに返しました。もう私が仕切ることはしないです」
謝る言葉は軽かったけれど、それで十分だと私は思うことにした。私は自分の時間を取り戻したかっただけだ。
それからの義家族の会食は、私に予定を聞いてから決めるか、私抜きで勝手に行って勝手に払うかのどちらかになった。どちらでもいい。私が受付の前で立たされることは、もうない。
さいごに
「外すなら、こちらも外れる」――このひと言で流れが変わることがあります。読んでいて、胸がざわついた人もいるかもしれませんね。誰かの好意や段取りに甘えたまま、人を除け者にするのは違うよね、と。
あなたなら、店先で同じことを言われたらどうしますか。自分の時間と気持ちを守る一歩、考えてみたくなります。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。


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