結婚式の打ち合わせから帰った夜、テーブルに白い封筒が置かれていた。夫が封をつつき、「90万きっちり入ってる」と私に見せた。うなずいたけれど、胸の奥に小さな違和感だけが残った。
「俺が預かる。任せとけ」
義母が用意してくれた結納金は、式場の前金にも充てる予定だった。
私が「金庫に入れようか?」と聞くと、夫は封筒を背中側に回し、「俺が預かる。任せとけ。数えたし、90あるから」と笑った。
その夜、夫からメッセージが届いた。「90ぴったり。明日からの支払いはこれで回せる」。心強い言葉のはずなのに、なぜか落ち着かなかった。
「あれ、30しかない?」
数日後、式場から「仮予約金を今週中に」と連絡が来た。私は引き出しの封筒を出して数えた。10万円ごとに束になっていたのだが、その束が3つ。どう見ても30万円しかない。
「ねえ、これ…」と封筒を見せると、夫は眉を寄せた。「数え違いだろ。母さんがどこかで抜いたのかも」。
その発言に、言葉が詰まった。義母がそんなことをする人じゃないのは、私も知っている。「お義母さんに確認しよう」と言っても、夫は「忙しいから。俺がやる」で押し切った。封筒はまた夫の手に戻り、私の不安だけが増えた。
玄関のチャイム「今いい?」
三日後の夕方、玄関のチャイムが鳴いた。ドアを開けると義母が立っていた。「今いい?」
リビングに通すと、義母は封筒サイズのメモとスマホを出した。「あの時、万札を積んでから、これ入れたの。『9×10=90』って書いて、上に置いて封したよ。それで入れた直後の写真を撮って、あんた(夫)に送ったよね」
スマホの画面には、ピン札がきれいに並んだ写真と「90入れたよ。ピン札にしてある」の文字。送信時刻も、あの夜の数分後になっていた。
夫は姿勢を変え、テーブルの角を指でトントンと叩きはじめた。「…いや、その…俺、後で補填するつもりで…」声が急に小さくなる。
「今日、戻しなさい」
義母は夫をまっすぐ見た。「結納金よ。あんた、このお金に手つけたよね」
夫は視線を泳がせた。「ちょっとだけ、カードの支払いに…すぐボーナスで戻すつもりだった」
義母はため息を一つ。「今日、戻しなさい。今から。で、家計はしばらく彼女が見る。あんた一人では抱えない。抱えさせない」
夫は渋い顔で財布と通帳を持ってきた。スマホでネットバンキングを開き、貯蓄口座から60万円を私名義の結婚費用口座へ振り込む。入金の通知が鳴るのを、三人で見届けた。
後日、私は戻ってきたお金をピン札にして引き出し、封筒に足して90万円戻した。そして、封を閉じた。封の上に日付と「開ける時は二人で確認」と書いた。
「これからは二人で数える」
「ごめん。本当に悪かった」
夫は頭を下げた。私は「今後の支払いは、私の口座経由にしよう」と提案。義母も「そうしなさい」とうなずいた。
2人のルールを決めた。
- 結婚費用は私名義の専用口座で管理する。
- 現金は二人で数え、開ける時は日時と場所をメモする。
- 夫の個人的なカード支払いは家計から切り離す。
紙に書いて冷蔵庫に貼ると、夫は「小遣い制でいい。明細も見せる」と言い、スマホの家計アプリを私に共有した。
「二人で、ね」今の私たち
あれから、支払いはすべて私の口座を通すようにした。式場とのやり取りも滞りなく進み、必要な時に必要なだけ動かせる安心が戻った。
夫は「補填するつもりだった」という言い訳を繰り返さなかった。翌月には自分のカードの限度額を下げ、不要なサブスクを解約。給料日には一緒に通帳を見て、次の支払いの段取りを確認するのが習慣になった。
義母は時々、野菜を持ってくる。「これ、おいしいわよ」と笑う。封筒を開ける時は、今でも二人で横に座る。私が一人で抱えず「一緒に確認しよう」と言えたこと、そして義母がメモと送信履歴を持って来てくれたこと。どちらも私には大きな助けだった。
さいごに
お金の違和感は、早めに口にすると小さいうちに片づきます。封筒にメモ、送った履歴、二人で数えるだけでも安心は増えますよね。もし同じ場面になったら、あなたは誰にまず声をかけますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。



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