引っ越してきたのは2年前の春。
最初の挨拶では「よろしくお願いします」と笑顔で返してくれた隣の住人が、こんなにも頭を占めるようになるとは思っていなかった。
「ちょっと音が気になって」──いつも笑顔で、でも必ず何かある
最初に言われたのは、入居して3週間ほど経った頃だった。
廊下でたまたま顔を合わせると、「最近、夜に椅子を引く音が響いてくるんですよね。気になっちゃって」とにこやかに言われた。
驚きながらも「すみません、気をつけます」と謝った。その日からラグを敷いて、椅子の脚にはフェルトを貼った。
でも、それで終わりじゃなかった。
次は洗濯物。「ベランダの突っ張り棒、少しはみ出てますよ」。
その次は来客のこと。「この前、夜に話し声が漏れてきました」。
怒鳴られているわけじゃない。声を荒げるわけでもない。
いつも穏やかに、まるで世間話のついでのように言ってくる。だからこそ——どう受け取ればいいのか、わからなくなった。
「クレームとも言い切れない」から余計しんどい
「怒鳴られた」「張り紙をされた」なら話は早い。
でも相手は笑顔で、言葉も丁寧で、内容も「一応もっともなこと」だったりする。
そのたびに私は「ご迷惑おかけしてすみません」と頭を下げて、また何かを変えようとする。フローリングにマットを追加して、来客は早めに切り上げて、洗濯物の位置も調整して。
気づけば、自分の生活がどんどん小さくなっていく感覚があった。
「私って、そんなに迷惑な住人なの……?」
そう思い始めてから、廊下に出るのが怖くなってしまった。
宅配が来るたびにドアスコープで確認して、隣の気配がないタイミングを見計らって外に出る——そんな毎日になっていた。
「言えない」のではなく「言い方がわからない」のかもしれない
正直に言うと、「もうやめてほしい」と思っている。
でも何を? 笑顔で話しかけてくることを? 指摘そのものを?
相手は「親切に教えてあげている」という顔をしているし、私も「ご指摘ありがとうございます」という顔をしている。この関係に名前をつけようとすると、どこにもはまらなくて困る。
ハラスメントと呼ぶには、証拠も被害感もうっすらすぎる。でも、毎日じわじわ削られているのは確かだ。
友人に話すと「管理会社に言えばいいじゃん」と言われる。でも、言って関係が悪化したら? 余計に住みにくくなったら? そっちの不安も同じくらいある。
だから今日も、ドアを開ける前に少しだけ深呼吸する。——それが今の私にできる、唯一の抵抗かもしれない。
さいごに
怒鳴られているわけじゃないのに消耗する、そのしんどさって、案外うまく人に伝わらないんですよね。「そんなに気にしなくても」と言われるほど、余計に孤独になる。
あなたが感じているモヤモヤは、気にしすぎじゃないかもしれませんよ。じわじわ続く小さなストレスは、大きな一発より長く響くこともありますから。
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。



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