義妹のことを「気が利くな」と思っていた。あの日、玄関に大きな段ボールが置かれるまでは。持ち上げた瞬間、腰にずしんときて、嫌な予感がした。
「全部お菓子にして配って♡」
週末、夫と一緒に義実家へ夕食の手伝いに行った。
少し遅れて来た義妹が、玄関に段ボールを置く。ふたをめくると、サツマイモがぎっしり。表面は土が乾いていて大ぶりのものが多い。
「産直で箱買いしちゃって。多すぎたから、これでスイートポテトと大学芋にして、親族みんなに配っておいて? お母さんにも話してあるから♡」
言い終えるなり、義妹はコートも着ずに「じゃ、お願いね」と手を振って出ていった。10分もいなかったと思う。
私は曖昧にうなずいてしまった。夫は台所で義父と鍋を見ていて、このやりとりを聞いていない。
箱をのぞき込む。数はざっと見て20本以上。スイートポテトなら蒸して皮をむき、裏ごし。大学芋は切って水にさらして揚げる。砂糖や油、醤油、ごま。容器もいる。私の頭の中で、買い出しリストと作業時間がどんどん増えていく。
それでも、その場で「無理」と言えなかった自分がいた。
「あなたが作って配るって聞いたけど?」
3日後、義母から電話が来た。
「○○(義妹)から、あなたがお芋でお菓子作って配るって聞いたの。何人分かしら?」
居間にいた夫が、私のスマホのスピーカー越しの声に顔を上げた。
「え、誰が配るって言ったの?」と夫。
「○○が、そう言ってたのよ」と義母。
夫は受話器のそばに来て、落ち着いた声で言った。
「お母さん、それは丸投げだよ。材料だけ置いて帰って、全部をうちの奥さんに作ってっていうのはおかしい。やるなら本人がやるべきだと思う」
受話口の向こうで、短く息をのむ気配がした。
「……そうよね。私、確認しないで話を進めちゃったわ。ごめんなさい」
そのひと言で、私もやっと口が開いた。「私も難しいです。引き受けられません、ごめんなさい」
「芋、取りに行くね」
その夜、義母が義妹に連絡してくれたらしい。翌日、私のスマホに義妹からメッセージが来た。
「お芋、取りに行くね。急に押し付けてごめんね」
短い文だったが、謝罪の言葉はあった。約束の時間に義妹が来て、玄関で段ボールを持ち上げようとして「重っ」と口にした。私が持ち手を下から支えると、義妹は目を合わせずに「容器とかも考えてなかった…」と小さな声で言った。
「そこまで準備するのは無理だよ」と私。義妹は「うん」とだけ返し、箱を車に運んで帰っていった。
夫「それは丸投げだよ」の一言
あの電話で夫が口を挟まなかったら、私はたぶん作業に取りかかっていた。蒸して、裏ごしして、揚げて、冷まして、詰めて、ラベルを書いて。何時間も台所に立って、砂糖や油や容器代も自腹で。
でも夫は「おかしい」とはっきり言ってくれた。義母に対しても、私に対しても。私一人では踏めなかったブレーキを、夫が一緒に踏んでくれた感じだった。
その後、義妹から何か頼まれそうになったら「夫に相談してから返事するね」と一拍置くようにした。たったそれだけで、義妹の「やっておいて」の頻度は目に見えて減った。
その後、聞いたこと
数日して義母から「○○が親族に大学芋を配ったみたいよ」と連絡があった。誰がどう作ったのかは聞いていないけれど、自分で段取りし、配ったならそれでいい。
あの日、段ボールひとつから始まったことだったけれど、夫婦で同じ方向を見ていると確認できたことのほうが、私には大きかった。
さいごに
身近な人の「つい」で始まる丸投げ、断りにくいですよね。今回のように、そばの家族の一言が背中を押してくれることもあります。すぐ決めず「相談してからね」と一拍置くのも一つの工夫。あなたなら、どんなふうに線引きしますか?
※本記事は、実際の体験談をもとに作成しています。取材対象者の個人が特定されないよう固有名詞などに変更を加えながら構成しています。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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