「防災備蓄、ちゃんとできていますか?」そう聞かれると、「やらなきゃとは思っているけど、なかなか…」「完璧に揃えるなんて無理!」と、つい気が重くなってしまう方も多いのではないでしょうか。
今回、「サントリー天然水」の新たな防災備蓄啓発活動としてスタートした「ちょ備蓄」プロジェクトが実施した防災備蓄に関する実態調査によると、7割以上の人が日用品の「買い置き」習慣があるのに、「備蓄が十分」だと感じている人はたったの3%未満という驚きの結果が。
このギャップの原因について、防災心理学者の木村玲欧先生は「備蓄は特別なものだという思い込みが一番の課題」だと指摘します。
そこで今回は、木村先生のコメントをもとに、日々の暮らしの中で誰でも簡単に取り組める「小さな成功体験の積み重ねと継続」で、無理なく大切な家族を守るための備蓄法をご紹介します。
備蓄が「特別なもの」になっていませんか?
「防災備蓄」と聞くと、特別な保存食や専用のアイテムを、必要量きっちり揃えて、手をつけずに保管しておくイメージはありませんか?
この「備蓄は完璧でないといけない」という「ゼロヒャク思考」こそが、私たちが最初の一歩を踏み出せない大きな要因だと、木村先生は解説します。
調査でも、8割以上の人が「備蓄は必要な量や内容を揃えるべき」だと考える一方で、実際に「備蓄が十分」だと答えた人はわずかしかいませんでした。
この意識と実態の大きなギャップは、「全部揃えるのは難しそう」「お金がかかる」といった心理的なハードルが行動を妨げている証拠です。

しかし、木村先生によると、いつも購入している日用品や、普段から食べている食料品も、災害時には十分役立つ「備蓄」になるそうです。
特別なものではなく、日常生活と防災備蓄を切り離さずに考えることが大切です。
カギは「小さな成功体験の積み重ね」と「継続」
では、どうすれば無理なく備蓄を始め、続けられるのでしょうか?
木村先生は、「普段の日用品を少し多めに買い置きする」という行動も、立派な備蓄であり、これこそが「自分にもできる」という小さな成功体験につながると語ります。
実際、普段の買い物で食品や日用品などを多めに買い置く習慣が「ある」と答えた人は73.1%にも上っています。

普段から、ティッシュやトイレットペーパーといった日用品をはじめ、レトルト食品、ミネラルウォーターなどを、「無くなると困るから」「安売りの時にまとめて」といった理由で、すでに「無意識の備蓄」としてストックしています。
木村先生は、この日常の延長にある行動を意識的に行うことが、「賢い備蓄」の第一歩だと推奨します。
木村先生からのアドバイス
「安売りの時にまとめ買いすることは、節約であると同時に、実は備蓄を進める行動です。普段は必要なものしか買わないのに、安売りの時はついたくさん買ってしまいますよね。そういう時こそ備蓄の始め時。安く備えられる備蓄チャンスです。こういったことが、無理なく続けられる“賢い備蓄”の第一歩です」
「使って補充する」習慣で備蓄を日常に
備蓄への心理的なハードルを下げるには、「備蓄は『備蓄用』として分けない」ことが重要です。
木村先生は、備蓄を「特別なもの」としてしまい、もったいないからと保管し続ける意識が、かえって備蓄への意識を低くしてしまうと指摘します。
大切なのは、「ただ備える」のではなく、「使って補充する(循環させる)」という習慣です。
- いつもの飲み物や食品を「プラス1個」多めに買う
- ストックの棚から使ったら、次の買い物で必ず買い足す
このシンプルな繰り返しで、備蓄品が日常の中で無理なく入れ替わり、賞味期限切れの心配も減ります。これが実効性のある備蓄につながる、まさに「使ってこそ備蓄」なのです。
とくに大切な「水」の備蓄を見直そう
飲料水は、災害時に最も大切な備蓄の一つです。
しかし、今回の調査では自宅で水の備蓄が「ある」と答えた人は55.1%と、半数近くができていないという結果が出ています。
備蓄しない理由の第1位は「備蓄のスペースがない」。これも「備蓄用」として切り分けて考えていることのあらわれかもしれません。

木村先生からのアドバイス
「水は飲むためだけでなく、生活や衛生を保つためにも欠かせません。(中略)水を『備蓄用』として飲まずに買い置いておくのではなく、手軽なサイズをたくさん購入し、日常でも飲用して、飲用したら買い足す、普段使いのものとすることが大切です」
また、水は1人あたり1日3Lが必要と言われていますが、これは飲用水のこと。生活用水も必要です。
備蓄品として2Lペットボトルを買う人が多いですが、木村先生は、衛生面や携帯性を考えると、500ml程度の飲み切りサイズも多めに備蓄しておくことを推奨しています。
避難所に持ち運ぶ際にも500ml程度なら手軽に持ち運べるためおすすめです。
木村 玲欧(きむら れお)氏 プロフィール
兵庫県立大学環境人間学部 大学院環境人間学研究科教授。専門は防災心理学、防災教育学、社会調査法。内閣府 防災教育チャレンジプラン実行委員会委員長などを務める。著書多数。
まとめ
「備蓄は特別なもの」という思い込みを捨て、いつものお買い物の中で「ちょっとだけ意識する」こと、そして「使ったら補充する」というサイクルを生活に取り入れるだけで、無理なく、着実に備蓄を積み重ねることができます。
ぜひ皆さんも、まずは好きな飲料や食品を「プラス1個」多めに買う、安売りの時に日用品をストックするなど、「小さな成功体験」から始めてみてはいかがでしょうか!
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