子どもの発達障害の種類と特徴のチェック 気になるときの相談先を詳しく紹介

       
育児の悩み
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育児の悩み

近年「発達障害」という言葉は専門家だけでなく、広く一般的に知られる言葉になりました。教育分野では「気になる子」という言い方もしますが、定義や特徴について詳しく分からないと子を持つ親として、子どもの成長が心配になりますよね。

本記事では、筆者が学生時代に特別支援、発達障害について学び、児童発達支援センターや児童発達支援・放課後等デイサービスの多機能型事業所で長年療育に携わる保育士の経験も踏まえ、発達障害の特性(特徴)や困ったときの相談先を詳しく解説します。

発達障害とは

生まれつき脳機能の発達にバラつきがあり、得意・不得意の偏りが大きく表れる状態を発達障害と言います。周囲の環境と本人の考え方・感じ方のミスマッチから、社会生活に馴染むのが難しい場面も多々あります。

発達障害の特性(特徴)は一見して分かりにくく、症状や困りごとは人それぞれです。そのため、「自分勝手」「わがまま」「怠けている」「親の育て方が悪い」などと捉えられることがよくあります。
しかし、本人の怠慢や育て方が原因ではありません。周囲の環境やかかわり方を工夫すれば社会生活の困難さが軽減されると言われています。

子どもの個性や能力、得意・不得意などを正しく理解したうえで、一人一人に合ったサポートが大切です。

発達障害の定義

出典:LITALICOジュニア https://junior.litalico.jp/about/hattatsu/

日本での発達障害の定義は、発達障害者支援法(定義2条)において「自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害などの脳機能の障害で、通常低年齢で発現する障害」とされています。

現在では「自閉症、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害」を統合して「自閉症スペクトラム」という言い方が一般的です。
つまり、発達障害は大枠の表現で、細かく見ると自閉症スペクトラム・学習障害・注意欠陥多動性障害の3つの特徴に分けられます。

*注意欠陥多動性障害という名称が現在は「注意欠如・多動性障害」という名称に変更されています。名称の変更はありますが、障害の特徴に変わりはありません。

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発達障害の種類と特徴

発達障害についてよく理解するために「自閉症スペクトラム」「学習障害」「注意欠如・多動性障害」の3つの障害とその特徴を詳しく紹介します。

発達障害に知的障害を併存する場合もあります。言語発達遅滞や協調性運動障害、てんかん、チックなどを併存している人もしている人も多いです。
光や音、匂い、感触などに敏感な感覚過敏や痛みや五感への刺激反応が鈍い感覚鈍麻がある場合もあります。
他にも、障害の程度や発達年齢もさまざまです。

自閉症スペクトラム/自閉症スペクトラム障害(ASD)

自閉症スペクトラム・自閉症スペクトラム障害は、自閉症やアスペルガー症候群、広汎性発達障害などが統合された名称です。
英名のAutism Spectrum Disorderの頭文字をとってASDと言われることもあります。

主な特徴として

  • 言葉の遅れ
  • 想像することの苦手さ
  • コミュニケーションの障害:呼びかけられても反応しないなど
  • 対人関係・社会性の障害:一人遊びが多い、ごっこ遊びを好まないなど
  • パターン化した行動やこだわり:決まった順番、道のりでないと怒る、特定のものに執着するなど

があります。この他に感覚の過敏や鈍麻性を伴うこともあります。

先の予定が分からない不安を強く感じている子どもが多いです。

かかわり方の例

  • 物事の予定・見通しが持ちやすいように、写真やイラスト、文字など目に見える形で予定や変更を伝えましょう

子どもの理解・発達段階に合わせて分かりやすい視覚情報を取り入れましょう。言葉だけでは帰りの支度がなかなかできない子どもでも、順番にやることをイラストで伝えると、自分でイラストを確認しながら支度ができるようになった実例があります。

  • 抽象的な表現はわかりにくいので、伝えるときは短い言葉で、具体的にゆっくり伝えましょう

例えば、片づけをしてほしい時は「きちんと片付けて」ではなく、「おもちゃを箱に入れて」と具体的に伝えると分かりやすいです。

注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)

注意欠如・多動性障害(ADHD)は生まれつきの脳機能の一部に障害があることで「不注意」「多動性」「衝動性」の特徴が生じる発達障害です。

ADHDの特徴は「不注意優勢に存在」「多動・衝動優勢に存在」「混合して存在」と人によってさまざまな傾向があります。

主な特徴は

  • 不注意優勢に存在:不注意の特徴が強く現れ、多動・衝動の特徴があまりないタイプ
    (集中力が持続しにくい、忘れものが多い、すぐに気がそれてしまうなど)
  • 多動・衝動優勢に存在:多動・衝動の特徴が強く現れ、不注意の特徴があまりないタイプ(動いてないと落ち着かない、無意識に体が動いてしまう、感情や欲求のコントロールが苦手)
  • 混合して存在:不注意と多動・衝動の特徴の両方が現れるタイプ

うっかりミスや忘れ物が多いため怒られることが多くなり、自己肯定感が低下する子どもが多いです。

かかわり方の例

  • 持ち物や時間割、準備物などは大人も一緒に確認して、忘れ物を予防しましょう。

子どもの年齢や能力に合わせたチェックリストを作り、自分で確認しながら忘れ物を防ぐ努力をしていた事例があります。目に見える形で確認する習慣がつけば忘れ物は格段に減ることが期待できます。

  • 動かないことを強要するのでなく、お手伝いなどの役割を伝えて動く時間を確保しましょう

苦手なことを強要されると子どもはしんどくなってしまうため、役割をもって行動できるように促していくとよいです。周囲から「ありがとう」と感謝されることで、自然と子どもの自己肯定感も育まれます。

  • 衝動的な行動が減るように「ゆっくり歩こう」「順番に並ぼう」など、子どもの気付きを促す声掛けをしましょう

禁止の声掛け「〜したらダメ」でなくどうすればいいのか気づける声掛けがあると、子ども自身で気づいて行動のコントロールができるようになった事例があります。
約束事に関しても言葉だけで忘れてしまう場合はメモに書き、いつでも確認できるようにするのも効果的です。

限局性学習障害/学習障害(ⅬD)

学習障害は知的な遅れがないものの「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算・推論する」能力のうち1つ以上の修得・活用に困難を示す発達障害のことでLearning Disorder(LD)都力されることもあります。

限局性学習障害は医学的な診断基準に基づく学習障害のことです。教育的な学習障害の定義とは少し異なるため、文部科学省の定義に基づき解説します。

主な特徴

  • ディスレクシア(読字障害):字を読むことに困難がある障害(文字の読み方、形の認識が苦手でぼやけて見える、鏡文字のように見えるなど)
  • ディスグラフィア(書字表出障害):字を書くことに困難がある障害(文字の形が認識しづらく、視覚から得る情報処理が苦手で文字の大きさや形のバランスが取れないなど)
  • ディスカリキュア(算数障害):算数・計算、その場にないものを推論することが苦手で、順番に数えることができても数の概念で捉えられないなど)

音読で行を読み飛ばしたり、枠内に収めて文字を書くのが苦手な子どもが多いです。

かかわり方の例

  • タブレットや計算機、マス目が大きいノートなど子どもの特性に合った教材を使いましょう

小さい枠に書くのが苦手な子どもに大きなマス目のノートを見せて文字を書くのを促すと、嫌がっていた文字を書き始めた事例があります。
字が汚い、はみ出ているなどと指摘されることが多いと自信を失い文字を書くことへのモチベーションが下がるため、「できた」経験をたくさん積み、自信をつけさせましょう。

発達障害はいつ頃気づく?

発達障害は先天的な脳機能障害の特性ですが、目に見えづらいため生まれてすぐは気づきにくいです。しかし、早期発見・早期療育と言われており、早い段階では1歳半検診で医師に指摘される場合もあります。

その他だと保育園や幼稚園に入園して集団の中に入ることで、特性や子どもの困り感が目立って気づくケースが多いです。小学校の就学前健診や就学後に学習や集団生活での困難さに気づくケースなどがあります。

発達障害かもと気になったら

子どもの発達に気になるところがあり、「発達障害かもしれない」と気になったら、一人で悩まずに家族や専門機関に相談しましょう。

相談先で子どもの障害について現実を突きつけられることに不安を感じて、なかなか踏み出せない方も多いかもしれません。

もし発達障害だとしても、大切なのは子どもの特性を個性として正しく理解して早期に適切なサポート、支援を受けることです。
早い段階から支援を受けることで、子ども自身も生活の困難さが軽減されることが予想されます。

発達障害のチェック項目

発達障害の診断は専門の医療機関で、医学的な診断基準(DSM-5)に基づいて行われます。
診断基準や障害の特徴をもとにした簡単なチェック項目の紹介です。

※以下はあくまで参考程度の例です。
気になる点がある場合は、専門の相談機関や病院で子どもの様子を相談しましょう。
上記の気になる点をメモしておくと、相談時の聞き取りでスムーズに受け答えできます。

自閉症スペクトラム/自閉症スペクトラム障害(ASD)

  • 抱っこや手をつなぐことが苦手
  • 視線が合いにくい
  • あやしてもなかなか笑わない
  • 寝つきが悪くちょっとした物音で起きる
  • 言葉が遅れている
  • 保育所や幼稚園で集団行動に加わらない
  • 話しかけても反応がうすい
  • 極端な偏食がある
  • 特定のものにこだわりがある
  • 感覚過敏/鈍麻がある

注意欠如・多動症/注意欠如・多動性障害(ADHD)

  • 多動でどこに行ってしまうか分からない
  • ルールや順番を守ることが苦手
  • じっとしていることが苦手
  • 注意されても何度も同じことを繰り返してしまう
  • 注意を向けることや持続が苦手
  • 不注意な間違いをする
  • 物事を順序立てることが苦手
  • 走り回ったり高いところに登ったりする
  • しゃべりすぎてしまうことがある

限局性学習障害/学習障害(ⅬD)

  • 単語を間違って読む
  • 発音の困難さがある
  • 文章理解の困難さがある
  • 文法や句読点を間違える
  • 言葉を書くことの困難さがある
  • 数の概念や計算の困難さがある
  • 推論の困難さがある

相談窓口について

相談先に迷ったときは、身近なお住まいの地域の市役所の障害福祉課に問い合わせると、相談先を紹介してくれます。
また、かかりつけの小児科や通っている幼稚園、保育所、小学校に相談してみるのも方法の一つです。

以下で紹介する相談窓口での相談は無料で、発達障害の診断書がなくても対応可能なため、「子どもの発達で心配事がある」「病院受診をしようか迷っている」「療育機関を探している」など、少しでも気になることがあれば相談してみるといいでしょう。

児童相談所

児童相談所は18歳未満の子どもに関する相談を受けている機関です。
児童福祉司、児童心理司、医師、保健師などの専門スタッフが子ども本人や保護者など幅広い人から相談を受けています。子どもの発達が気になる場合の相談にも、助言や医療機関や支援機関の紹介なども行っています。

市町村保健センター

市町村保健センターは市町村が設置・運営している市域の保健や衛生に関する業務を担当している行政機関です。
1歳半検診や3歳児検診も行っており、子どもの発達に関する相談に対しても助言や必要に応じて医療機関やほかの支援機関の紹介などを行います。

児童発達支援センター

発達障害などの障害のある子どもに地域で支援を提供する機関です。
障害のある子どもが通って日常生活を円滑に営むための知識やスキル習得のためのプログラム、対人関係などの集団生活に適応するためのサポートなどを提供しています。

子育て支援センター

子育て支援センターは、児童福祉法に基づく「地域子育て支援拠点事業」の一つとして設置されている機関です。
主に乳幼児の子どもと保護者が交流を深める場です。子どもの発達についての育児相談をはじめ、地域の子育て家庭の相談援助も行っています。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、発達障害のある方に向けてさまざまなサポートを提供している支援機関です。
年齢にかかわらず発達障害の方やその家族からの相談に対して、必要な助言や医療機関、支援機関の紹介の紹介などを行っています。

その他にも発達障害者教育推進センターや発達障害情報・支援センターなど相談、助言の窓口はさまざまです。

病院(医療機関)の探し方と受診の流れ

医療機関は最終的に発達障害かどうかの診断や判断をするために、必要な知能検査などの心理検査をする場所です。

医療機関の探し方と受診の流れを解説します。

病院(医療機関)の探し方

発達障害かどうかの診断ができるのは、大学病院や総合病院、児童精神科・小児神経科、発達外来、発達クリニックなどです。
インターネットでお住まいの地域の病院を検索して予約したり、発達障害者支援センターなどの相談窓口に相談し、病院を紹介してもらうのも一つの方法です。

発達障害情報・支援センター(国立障害リハビリセンター)や子どもの心の診療所マップ(国立成育医療研究センター)からお住まいの地域に合わせて探すこともできます。

病院受診の流れ

①電話やネットで受診予約をする。

②問診(医師が生活の様子などを保護者に聞く)が行われ、子どもは心理検査や知能検査などを受けます。(数回に分けられる)

②検査結果と数回分の子どもの様子や行動を問診・観察した総合的な判断をもとに、診断結果が出ます。医学的な基準を満たしていた場合は発達障害だと診断されますが、診断が出ないこともあります。しかし「発達障害の特性なし」ということではありません。検査結果の説明で子どもの得意なことと苦手なことを伝え、子どもの特性や傾向、対処方法なども話してくれる医療機関もあります。

*診断名は「ASD」のみのこともあれば「ASDとADHD」のように並存することもあります。

現在、発達に関する受診人数が増えているため、地域によっては数か月先まで診察予約でいっぱいなこともあります。

病院受診したい場合は、あらかじめ発達障害の診断をしてくれるのか確認し、前もって予約して待ちましょう。

まとめ

本記事では「発達障害とは何なのか」「発達障害の特徴やかかわり方」「相談先はどこなのか」について、療育現場で実際に経験したことも含めて紹介しました。

障害と言われるとショックを感じる方が多いと思いますが、子どもの個性として受け止め、子どもの得意・不得意を正しく理解することでかかわり方も見えてくるはずです。

子どもの発達での悩みは一人で抱え込まずに、まずは身近な相談先を利用してみましょう。

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